2017.11.23 08:30

[いのぐ]震災を語り継ぐ 東北の被災者から高知県の中学生へ

 東日本大震災での体験を聞く研修会を10月28日、高知市で開きました。語り部を務めたのは、防災イベント「むすび塾×いのぐ塾in安芸」のために高知を訪れたのは東北福祉大1年の志野ほのかさんです。語り部としての思い、震災を語り継ぐとは―。「私と同じ悲しい思いをしてほしくない」と、つらい記憶を語ってくれた志野さん。中学生の防災いのぐ記者人が、じっくり耳を傾けました。

※「むすび塾×いのぐ塾in安芸」=全国各地で防災ワークショップ「むすび塾」を展開する河北新報社(宮城県)と、高知新聞社、安芸市自主防災組織連絡協議会の共催。

「大変だったね」で終わらせないで
◆語り部 志野ほのかさん◆
 私は宮城県東松島市野蒜(のびる)地区で生まれ育ちました。自宅はとてもきれいな野蒜海水浴場から500メートルほどの距離で、毎日波の音が聞こえるくらい海の近くで、両親と姉、祖父と暮らしていました。

 3月11日は通っていた野蒜小学校にいて、体育館に避難しました。野蒜小は海岸から約1・3キロメートル内陸にあり、避難所に指定されていました。しかしそこにも津波が来て、たくさんの命が奪われました。私も死を覚悟しましたが、2階へ逃げて助かりました。

 当時、自宅にいた祖父と会えたのは地震から2週間後で、そこは遺体安置所でした。近所の人は声を掛けてくれたのですが、私が帰ってくるからと言って祖父は避難しなかったそうです。

 震災の2日前にも、東北では大きな地震がありました。でも私の家族は何も備えることはしませんでした。また祖父はチリ地震津波(1960年)での体験をよく話してくれていましたが、それも単なる思い出話になっていました。

 もし、それぞれで避難すると家族で話し合っていたら、祖父は犠牲にならずに済んだかもしれません。すごく後悔しています。

 祖父を亡くしたり、家や母校、古里自体が消えてしまったり、全て思い出すのも、話すのもつらい記憶です。でも私は高知まで来ました。南海トラフ地震がいつ起きてもおかしくない地域で、ちゃんと津波に備えてほしい、同じ悲しい思いをしてほしくない、と思ってここまで伝えに来ました。

 第一に伝えたいことは「自分の命は自分で守る」です。それぞれを信じてすぐ逃げること、日ごろ家族で防災について話し合っておくことは本当に大切なことだと思います。

 二つ目は「指定避難所は信じない」ことです。津波の高さとか、想定を信じてはいけません。東日本大震災では、ここなら大丈夫といわれていた避難所でたくさんの命が奪われました。逃げたのにその人たちは亡くなったんです。生きるために、とにかく高いところに逃げてください。

 人前で話すのはとても苦手で、今も慣れていません。ただ語り部活動をして、人との関わりをすごく自分の中でも大切にするようになりました。感じ方もすごく豊かになっていて「どうやったら表現できるかな」とか「誰かに発信しなきゃ」という思いも強くなりました。

 私の体験を聞いて、震災を知らない人は「あー大変だったんだな」などと感じると思います。ただそこで終わらせてほしくなくて「じゃあどうする」「どう備える」って、そこまでつなげてもらえるような話し方をしようと思っていまず。

 今もこうやって当たり前に暮らしていることが幸せなんだというようなことを、まず考えてもらってそれが最終的に防災につながればと思っています。

 私はこうして語っているので、聞いてくれた皆さんには「語り継ぐ」の「継ぐ」ということを考え、行動してほしいです。

◆河北新報社 防災・教育室長 武田真一さん◆
災害を意識する習慣を
 6年半たったけど東日本大震災は全く終わっていません。2万人以上が一度の災害で命を落としました。悲しみを抱えながら供養し続けています。捜しきれていない人の捜索や、児童と先生が亡くなった大川小など裁判も続いています。仮設住宅、災害公営住宅と住まいを移り、誰にもみとられることなく亡くなる人もいます。

 高知県の人は被災者の声を自分のこととして受け止められる、受け止めなきゃいけない地域に住んでいるので、ぜひ考えてください。震災を忘れないというのは、被災地の皆さんのためではなくて、自分たちの身を守るためとして向き合ってください。

 家族との話し合いや非常袋など、一つ一つチェックしていれば安全なのかというとそうではないんです。皆さんが大きくなって高知から出て行った時には、今までのシミュレーションは役に立ちません。

 地震だけじゃない、台風も噴火もあります。災害におびえながら暮らすのではありません。備えをチェックすることはやらなければならないが、災害を意識しながら生きるという感覚、習慣こそ大切なんです。

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カテゴリー: 教育いのぐ災害・防災


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