2017.11.08 08:00

【パラダイス文書】放置できない税逃れの闇

 タックスヘイブン(租税回避地)を利用した不透明な資金の流れが、また流出資料をきっかけに明らかになった。
 昨年、世界に衝撃を与えた「パナマ文書」と同様に、資料には各国の政治家や大企業、富豪らが名を連ねている。富める者が巧みに課税逃れや錬金術を試みている証しだ。
 「パラダイス文書」と名付けられた資料は、租税回避地への法人設立を手がける英領バミューダ諸島発祥の法律事務所などから流出した。
 パナマ文書に続き、国際調査報道ジャーナリスト連合が南ドイツ新聞を通じて入手した。加盟する各国の報道機関などが資料を基に取材を重ねてきた。
 改めて租税回避地の実態が浮き彫りになったといってよい。各国が連携して実態の解明と課税逃れの防止を強化したい。
 激震が走っているのは米国だ。ロス商務長官が関係する海運会社が、プーチン大統領の娘婿や側近2人が実質的に経営する石油化学大手と巨額取引をしていた。
 ロス氏は租税回避地にある投資ファンドに出資。さらに別のファンドを経由して海運会社の運営や取引に関係していた。
 本人は通常の取引だと強調しているが、プーチン氏の側近の1人は米政府の経済制裁対象だ。米国の国益と利害対立する「利益相反」を指摘する声もある。
 米ロの政権幹部が租税回避地を通してつながっていたともいえる。仮に違法でなくとも国民や国際社会を裏切る行為だろう。当局による徹底した調査が欠かせない。
 パラダイス文書の一部には、日本関連でも個人や企業合わせて千件以上の記載がある。鳩山由紀夫元首相らが租税回避地に設立された法人の役員に就任したり、投資商品を購入したりしていた。
 英王室が投資に利用していたことや、カナダの首相の盟友が課税逃れに利用した疑いも出ている。
 租税回避地は税金がゼロか非常に安く、登記情報も多くが不開示となっている。節税や投資だけでなく、脱税や犯罪で得たお金のマネーロンダリング(資金洗浄)などにも利用されやすい。
 普通の生活を送る市民がまじめに納税し、資金力がある企業や富裕層が課税を逃れる。これが許されては税の公平性は保てない。
 納められるべき税金が支払われなければ、市民の負担がさらに重くなる面もある。一部ファンドの資金はマネーゲームにも使われ、例えば石油価格の高騰などを招いて国民生活を苦しめる。しわ寄せを受けるのは常に市民だ。
 テロ組織の資金の隠し場所になっているとも指摘されて久しい。税逃れの場所は魑魅魍魎(ちみもうりょう)とした闇の世界だ。放置できない。
 パナマ文書でも、各国が連携して課税逃れ対策を進めることで一致した。国際社会で一丸となった取り組みが急がれる。
カテゴリー: 社説


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