2017.11.06 08:00

【ヘルパーの要件】財政ありきを懸念する

 厚生労働省が、訪問介護サービスのうち掃除、洗濯、買い物、調理など生活援助を受け持つヘルパーの要件を緩くする方針を打ち出した。
 来年4月には3年に1回の介護報酬改定がある。改定に向け厚労相の諮問機関、社会保障審議会で議論していく。
 現行より受講時間が短い研修制度を新設し、ヘルパーの確保を図るのが目的だ。要件緩和と引き換えに、介護報酬を引き下げようという狙いがみて取れる。
 人を増やせば、人件費が増え、介護報酬にも影響する。では要件を緩和し、待遇にも反映させてはどうか―。そんな財政ありきの制度変更ではないのか。
 生活援助を巡っては、昨年の介護保険制度の見直しでも、要介護1、2の人を介護保険の対象から外し、市町村の事業へ移すことが議論された。高齢者の反発と業務増となる自治体に配慮し、見送りとなった経緯がある。
 想定を上回るスピードで高齢化が進み、社会保障費は膨らみ続ける。介護保険財政も厳しく、利用者の負担を増やしている。
 社会保障費の在り方を考慮するのは当然だ。だからといって、つじつま合わせで済ませるのではなく、将来をにらんで、しっかりした制度を作らなければならない。何より高齢者が安心できないような制度では、介護保険の根幹に関わる。
 今の制度では、生活援助を行うにはコミュニケーション術、生活支援技術などを学ぶ介護職員初任者研修を受けなければならない。厚労省はこの研修の計130時間を短くした制度としたい考えだ。
 介護現場の裾野を広げることにつながる可能性はあろう。だが介護は人間相手の仕事だ。現行制度で一定時間の研修を課しているのは、それだけの学習が不可欠だとみているからではないのか。財政のために、そうした過程を犠牲にするのなら慎重に考えるべきだ。
 団塊の世代の人々が75歳以上となり、現状のままでは介護職員が38万人不足するとされる2025年度が近づいている。人材確保が急務なのは間違いない。
 介護職は仕事がきつい上、待遇が悪いことから慢性的な人手不足が続く。比較的軽作業だとしても、生活援助の介護報酬を下げて、人材を確保できるだろうか。
 生活援助を安易に利用する風潮があるともいわれている。サービス利用者の負担は1回数百円。家事手伝いの代わりにされている面があると、よく指摘される。
 きめ細かい実態調査が不可欠だ。必要に駆られ利用している人が大多数のはずだ。地域の見守り、支え合いが機能しているかなども併せて目配りしたい。
 介護を志す人には知識と技術をきちんと身に付けてもらう手だてが欠かせない。それが介護する側と、サービスを受ける高齢者の双方のためになるはずだ。
カテゴリー: 社説


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