2017.02.14 08:45
大流通を追って 消えないカツオ(2)卸売市場の「目合わせ」
そこで参考になるのが高知市弘化台の卸売市場の取扱量だ。産地直送などは含まれないものの、主な流れを追うことはできる。
2016年度は冷凍を含め3300トン。1匹3キロと仮定すると年間110万匹、1日平均3千匹が国内のどこからか集められ、この“食の玄関”を通って県民らの胃袋に収まった計算になる。
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スーパー「サニーマート」の水産バイヤー、松田むつみさん(43)が市場に現れたのは午前5時前。外はまだ薄暗く、場内はナイター戦の野球場のように明るかった。
パートを含めて18年間、同社の鮮魚売り場で包丁を握り、3年前から鮮魚の仕入れを担っている。
「店にカツオがない日はほぼありません。台風の時以外はね」
“不可欠のカツオ”の大部分を、この市場で仕入れている。
鮮魚が並ぶ「競り場(ば)」は約3900平方メートル。高い屋根に覆われたコンクリート床の空間だ。
この市場で、県内外の産地から魚を受け込んで売る業者が「卸売」の2社。競りなどを通じて2社から品物を買うのが「仲卸業者」と「売買参加者」。松田さんは売買参加者に当たる。
競り場は卸売2社がそれぞれのスペースを持つ。その中に「青物」「養殖」「カツオ」「貝類」など部門別の売り場があり、氷と魚の詰まった発泡スチロール箱の近くに、2社の担当者がそれぞれ待ち構えている。
松田さんは担当者と一緒に魚を見たり、価格を聞き取ったり。生魚の臭いと、箱が擦れるキュキュッという音の中を、記者もぬれた床で滑らないようについていく。
「市場に来るのは確認なんです」と松田さん。当日分の“買い物”は既に終わっているのだという。
前日のうちに卸売担当者から水揚げ予定を聞き、受け持ちの18店舗分を注文する。市場では注文したのと同じ魚を見て、品質を確かめ、前日の予定にはなかった良品があれば追加で購入する。
この日も、既に鹿児島産のカツオ約1トンを注文済みだった。3、4トン仕入れる日も珍しくないという。
「市場では『目合わせ』が特に大事。魚を見ずに注文しなければならないので、普段から卸売人とやりとりして、自分がどんな時にどんな魚を欲しがるかを、あらかじめ理解してもらうんです」
松田さんが市場を歩くころ、注文したカツオの一部は既に同社の「中央流通センター」(同市北御座)に届き、各店向けに仕分けられている。残りは市場近くの加工業者の工場で、たたきに変わっていた。
この流れによって、開店する午前9時には豊富な魚が売り場を飾ることになる。
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カツオは競り場の中心に置かれる。
松田さんは魚体を指で押し「ええサイズやね」と一言。卸売会社の一つ、大熊水産鰹(かつお)部主任の高島克季さん(33)がうなずいた。
この日は金曜日。土日2日分を注文する必要があった。
「週末の入荷はどう? 大きめが欲しい」と松田さん。高島さんが返した。「産地はこだわる?」
松田さんの頭の中に産地の地図が巡った。