2017.10.31 08:00

【原発補助金拡大】再稼働の容認狙いを疑う

 原発が立地する自治体を対象としていた国の補助金を巡って、経済産業省が応募資格を原発の半径30キロ圏内の自治体にも広げていたことが分かった。
 原発の再稼働には立地する自治体の同意が必要だが、周辺自治体も含めるよう求める声が根強い。事故が起きれば影響を受ける。不安を抱いて当然だ。原発から半径30キロ圏内の自治体は、詳細な避難計画作りを義務付けられるなど、万一の場合に備えた対応も求められている。
 一方で、原発が立地する自治体の周辺には再稼働に慎重な自治体も多い。応募資格の拡大は、補助金交付をきっかけに再稼働への容認を得ようと考えているのではないか。疑念が拭えない。
 2016年度から始まった「エネルギー構造高度化・転換理解促進事業」。廃炉などで影響を受ける可能性がある自治体をエネルギーの分野で支援しようとする内容だ。
 当初は原発が立地する都道府県、市町村に対象を限っていた。だが17年度から公募要領に「原子力発電施設を取り巻く環境変化の影響を受ける自治体」を加えた。当てはまる例として、原発からおおむね半径30キロの区域を含む市町村、その市町村がある都道府県を挙げている。
 風力や太陽光、小水力での発電といった再生可能エネルギーに関する技術開発、調査、普及といった取り組みを支援するという。それなら広く知らせてしかるべきである。
 公募といいながら報道発表はせず関係自治体を集めた説明会で済ませている。要領はホームページで公開しているものの、わずかに書き加えたにすぎず、この分野に精通していなければ容易に気付くまい。
 経産省は応募資格の拡大については「(廃炉など)原発の影響が周辺に及ぶことが分かり(事業の)仕組みを見直した」としている。だが、なぜ半径30キロ圏内としたのかは明らかにしていない。
 原発は国民の間で関心が高いテーマである。直近の全国世論調査では再稼働への反対が約6割に上り、賛成とした約3割の倍近いのだ。
 「事業に関しては日々運用を改善しており、逐一、報道発表することはない」ともいうが、それは勝手な理屈だ。
 国民生活に関わる事柄はきちんと公開するのが国の役目である。事業内容を改善したというのなら、なぜ水面下で関係自治体だけと情報を共有するのだろう。手順を踏んで丁寧に説明しようとしないから、意図を疑われるといっていい。
 波紋が起きている地域もある。九州電力玄海原発(佐賀県)の30キロ圏内にある同県伊万里市は再稼働に反対だが、再生エネルギー導入関係の約2200万円を求めた。地元では補助金が、反対の「口封じ」に結び付くと懸念する声が出ている。
 国が地域に不信を広げる糸口をもたらしたも同然だ。公金が原因で対立の構図が生まれることがあってはいけない。

カテゴリー: 社説


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