2017.10.30 08:00

【いじめ調査】未然防止につなげてこそ

 全国の小中高、特別支援学校が2016年度に認知したいじめは過去最多の32万3808件に上ったことが、文部科学省の問題行動・不登校調査で分かった。
 前年度から約9万8千件も増えた。特に小学校は約8万6千件増で低年齢化が顕著だ。
 全体件数の大幅増は、文科省が今回調査から、けんかやふざけ合いといった軽微なものも、一方的であればいじめとして計上するよう指示したことも影響している。
 いじめがエスカレートして子どもに深刻な影響を及ぼす前に、軽微な段階で芽を摘むことが大切だ。今回調査では、いじめの90・6%は既に解消し、9・1%が現在解消に向けて取り組み中だった。
 一方で、見逃されたいじめはまだまだあるに違いない。認知件数ゼロの学校が全体の約3割を占める。都道府県別の千人当たりの件数は最多が京都の96・8件、最少が香川の5・0件で19倍以上の差があった。
 大津市の中2男子のいじめ自殺をきっかけに、いじめ防止対策推進法が施行されて4年になる。それでも深刻ないじめは増えている。
 子どもが不登校になったり、心身に大きな被害を受けたりするなどの「重大事態」は、今回調査でも400件あり、前年度より86件増加した。自殺した児童生徒は244人で、うち10人がいじめに遭っていた。
 文科省は「いじめはどの子ども、どの学校でも起こり得る」として積極的に把握するよう教育委員会に求めている。しかし把握して数字を計上することは目的ではない。いじめを早期に見つけ、深刻な事態の未然防止につなげてこそである。
 今回の調査では、いじめや暴力行為の認知件数が小学生で大きく増え、問題行動が低年齢化していることも分かった。
 会員制交流サイト(SNS)など「パソコンや携帯電話での中傷、嫌がらせ」の認知件数も相変わらず増加傾向にある。学校だけで全てのいじめを把握するのは難しい。
 SNSは今の子どもにとって身近なコミュニケーションの道具だ。帰宅後や休み中の「見えないいじめ」という新しい課題にも対応しなければならない。
 逆に、SNSをいじめ相談の窓口にしようとの動きもあるようだ。文科省も来年度、一部の自治体で試行するという。
 子どもや親が「いじめられた」と訴えても、学校や教委がいじめと認めたがらない。そんな体質はどれだけ改善されたのか。
 文科省が進める「小さないじめ」からの積極的な把握は、学校に一定の意識改革をもたらす可能性がある。だが現場の教員の負担は確実に増える。
 教員を増やすのが理想的だが、すぐには無理だろう。学校内の情報共有を密にし、家庭や地域の支援団体の協力を得るなど、いじめに真正面から向き合う学校ぐるみの体制を築くことが必要だ。
カテゴリー: 社説


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