2017.10.29 08:00

【核廃絶決議】日本は信頼を失わないか

 日本政府が主導した核廃絶決議案が、国連総会第1委員会で賛成多数で採択された。国連総会本会議を経て正式な決議になる。
 24年連続の採択ではあったが、ことしは日本の核軍縮の取り組みが大きな失望に変わった年として記憶されないか危惧する。決議の内容が大きく後退した。
 昨年までは「核兵器のあらゆる使用がもたらす壊滅的な人道上の結末への深い懸念」を表明してきた。ことしは「あらゆる」を削った。これでは、例外的な使用が認められると受け取られかねない。
 7月に採択された核兵器禁止条約にも言及していない。日本は条約交渉に参加しなかったが、非核化を願う国際社会の取り組みを無視するかのような対応だ。
 一方で、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮には強い非難を盛り込んでいる。
 決議は、米国の「核の傘」に入る日本の姿勢が露骨に表れているだけではない。核軍縮に消極的で、北朝鮮に軍事攻撃の可能性もちらつかせるトランプ大統領に配慮したようにも映る。
 委員会の論議で、日本政府に非難や疑問の声が相次いだのは当然だ。条約を推進してきた国は「米国にすり寄りすぎだ」と反発した。
 決議案への賛成は昨年の167カ国から144カ国に大きく減った。逆に棄権が17カ国から27カ国に増えた。わずか1年で、決議案の評価がこれほど変わった事実を重く受け止める必要がある。
 日本は核兵器の恐ろしさを身をもって体験した国だ。米国によるビキニ環礁の水爆実験でも、多くの漁船乗組員が被ばくした。
 だからこそ「核兵器なき世界の実現」を外交目標の一つに掲げてきたはずだ。核保有国と非保有国の「橋渡し」役に手を挙げてきた。
 核兵器禁止条約に参加しない上、核廃絶決議の内容まで後退させるようでは、非核化への本気度が問われよう。
 核保有国の影響力は大きい。国連安全保障理事会で拒否権を持つ五大国もすべて保有国だ。橋渡し役が保有国に厳しい姿勢で臨まなければ、とても均衡は取れまい。
 河野外相は条約交渉に参加しなかった理由について、条約を通じた核軍縮では「保有国と非保有国の分断が進む」とした。改めて橋渡し役の重要性を説いていたが、その直後の決議案は非保有国の期待とはかけ離れたものではなかったか。
 ことしのノーベル平和賞に決まった国際非政府組織「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」の幹部も日本政府の対応に強く失望している。日本は信頼を失いつつあるように思えてならない。
 北朝鮮の核・ミサイル開発は認められない。解決に向け、国際連携は不可欠だが、対話の可能性を探ることが基本だ。核の緊張を高めることがあってはならない。日本の目指す核廃絶のかたちが問われている。
カテゴリー: 社説


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