2017.10.28 08:00

【投票率危機】民主主義の根幹揺らぐ

 「投票率危機」と言うほかない。政治は民意である。主権者である国民が選挙によって意思を表し、政治を決めていく。その民主主義の根幹が揺らいでいる。
 戦後27回目となった衆院選の投票率が小選挙区の全国平均で53・68%にとどまり、戦後2番目に低い結果に終わった。最低だった前回2014年衆院選を1・02ポイント上回っただけで、有権者の半分が沈黙するという状況に変わりはない。
 本県も同様だ。県内全体で51・87%と、過去最低だった前回からわずかに0・89ポイントの微増で、2番目の低さに低迷した。高知1区は前回に続いて50%を割った。
 今回の衆院選は、安倍首相による唐突な解散で「大義」がぼやけ、国民を戸惑わせた面はある。投票日に台風が接近し、有権者の足を止めた影響もあろう。
 だが、衆院選は全国、県内とも前々回12年、前回14年と続けて最低を更新してきており、今回もその低下傾向の延長線にあると見るべきだろう。参院選も9回連続で60%に届いていない。
 中選挙区時代に70%前後を維持していた衆院選は、小選挙区制で初めて実施された1996年の改選で初めて60%を割り込んだ。旧民主党が政権交代を果たした2009年は69・28%まで上昇したものの、自民党が政権に復帰した12年衆院選で再び急落し、最低を記録した。
 安倍自民党は投票率の最低記録を更新した12年、14年と今回を含め3回連続で衆院選に圧勝し、その間の2回の参院選も制した。公明党と合わせ衆院で3分の2の議席を占める安倍政権の「1強」は低投票率の上に成り立っているともいえる。
 今回の衆院選は世論調査で内閣の不支持率が支持率を上回る中、自民党がなお多数議席を維持した。小選挙区では全有権者の25%の票で75%の議席を獲得した。「冷めた民意」と、その選択結果が招いた政治図のギャップが際立つ。
 公益財団法人・明るい選挙推進協会の有権者調査では、投票棄権の理由は「関心がなかった」が最も多い。20代の投票率の低迷が全体を引き下げる傾向も続いて久しい。投票率の低下は地方選挙でも顕在化している。「1票では何も変わらない」という諦めの声もやまない。
 そうだろうか。選挙は政治への要望を託すためだけではない。政治への不満をぶつけ、現状を変えるための権利でもある。投票の放棄は「望まぬ政治」を生むことにもなる。主権者として「選挙とは」への自覚を深めたい。
 18歳選挙権の導入に伴う若者への主権者教育の充実に期待したい。全国で定着してきている期日前投票など、投票しやすい環境づくりも一層の広がりが必要だ。
 憲法前文を引く。「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し」「その福利は国民がこれを享受する」―。民主主義の原理をかみしめ直したい。

カテゴリー: 社説


ページトップへ