2017.10.27 08:00

【読書週間】本がある環境の大切さ

 きょうから来月9日まで、恒例の読書週間である。
 本のある生活がいかに心を豊かにするかは、いまさら言うまでもないだろう。この秋も思い出に残る一冊と巡り合いたい。
 ことしは読書週間入りを前に、「本離れ」や出版不況に悩む大手出版社が異例の意見表明をして、波紋が広がった。東京で開かれた全国図書館大会での出来事だ。
 「できれば図書館で文庫の貸し出しをやめていただきたい」。パネリストの1人として登壇した文芸春秋の社長が訴えた。
 図書館側は簡単にのめる話ではないだろう。手軽に読める文庫は需要も高い。図書館利用者からも反発の声が聞こえてきそうだ。
 文芸書の出版が中心の同社は文庫が収益の30%以上を占めるという。売れ筋の本も積極的に貸し出す図書館に不満を抱くのは分からないではない。価格を抑えている文庫ぐらいは買ってほしい、との読者への呼び掛けにも聞こえる。
 売り上げの低迷と図書館の貸し出しとの関係を示すデータはないという。それでも「良書を発行し続けて作家を守り、版元の疲弊に歯止めをかけるために必要なのが文庫の生み出す利益」と理解を求めた。
 質の高い読書環境を守るための一つの問題提起であることは間違いない。市場の低迷が続けば、出版社だけでなく作家も厳しい状況に追い込まれる。出版できなくなれば元も子もない。
 日本世論調査会が6月に実施した読書に関する世論調査では、漫画と雑誌を除いた本を1カ月の間に全く読まない人が33%にも上る。
 読まない理由としては「スマートフォンやゲームなどに費やす時間が増えた」との回答が7割を超えた。スマホが本離れに及ぼしている影響はやはり大きい。
 興味深いのは、そんな状況でも読書が必要だと考える人は9割を超えていることだ。いまは読んでいなくても、多くの人が読書の大切さを意識している。
 時間ができたとき、ふと読書に興味を持ったとき、仕事や勉強で読む必要ができたとき、本を手に取ることができる環境が身近にあることはとても重要だ。本県のように過疎が進む地域は書店が少なく、図書館の役割が大きい。
 世論調査でも、図書館に希望する蔵書は「現在のベストセラー本」が最も多く、「実用書など生活に役立つ本」「専門書や高価な本」と続く。図書館には文庫を含め多種多様な蔵書が求められる。
 出版社側も図書館の使命や役割の大きさは理解していよう。日本図書館協会は「双方で議論をし、読書環境をより良くする方向を考えたい」としている。
 本のある環境をいつまでも守るために私たちにもできることがある。特別なことではない。一冊でも多くの本に親しみ、本離れを解消していくことだ。

カテゴリー: 社説


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