2017.10.25 08:00

【商工中金の不正】驚くばかりのモラル欠如

 不正融資問題などを調査している商工中金が、不正融資に関与した職員と上司ら合わせて約千人に、減給や停職などの処分を科すことになった。全職員約3900人の2割以上に当たる大規模なものだ。
 既に商工中金は、代表権を持つ経済産業省と財務省のOB、生え抜きの3人全員が引責辞任する見通しとなっている。
 不正融資のほかにも、中小企業を対象に毎月、景況感や売上高などを聞き取って公表している経済統計調査でも、担当者が十分聞き取りしていなかった。架空の数値で結果を取りまとめており、3人はこの責任も取るという。
 政府が出資する金融機関で監督官庁の出身者がいるにもかかわらず、企業統治が全くできていなかったことになる。不正の当事者と管理責任のある上司はもちろん、歴代トップに天下り官僚を据え続けてきた経産・財務両省の責任も厳しく問われて当然だ。
 不正行為はこれにとどまらない可能性もある。融資問題が発覚した後で商工中金が行っている自主的な調査は、別の公的融資制度など8業務も対象としているからだ。
 最初に不正が判明した「危機対応融資」では、全国100店舗の大半で書類の改ざんなどが明らかになっている。この融資は、金融危機や大災害などによって、業績が一時悪化した中小企業に低利で支援する国の制度だが、不正は全体で数千件に上るとみられている。
 融資するか否かの判断は金融機関にとって、厳密さを必要とする最も重要な業務だろう。より慎重な対応が求められる国の制度で、対象外の企業も加えて、自らの実績にしていたことになる。
 経済統計調査でも、顧客に虚偽の情報を提供していた。日々競争に追われ懸命の企業にしてみれば、支援を受けるどころか、裏切られたも同然ではないだろうか。
 信用第一であるべき組織で、モラルを欠いた行為がこれほど広がっていた点には驚くしかない。まして商工中金は、中小企業の支援が使命であり、国が株式の46%を保有する政府系金融機関である。
 低利で長期の資金を供給するために、政府系金融機関が一定の役割を果たしてきたのは確かである。だが次第に民間との競合が激しさを増し、「民業圧迫」との指摘も受けるようになった。
 政府系金融機関の再編で、商工中金は段階的な完全民営化が決まっているものの、金融危機への対応のためとして先送りされている。ただ、ここまで組織の欠陥があらわになっては、在り方自体に関する論議が起こっても不思議ではない。
 近く公表されるという商工中金の調査結果を待って、経産・財務両省と金融庁は5月に続き、2回目の業務改善命令を出す方針だ。
 3省庁は監督や検査手法、なれ合いがなかったかを徹底的に検証する必要がある。
カテゴリー: 社説


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