2017.10.21 08:00

【イラン核合意】米の破棄表明は身勝手だ

 イランが核開発を制限する見返りに、欧米が経済制裁の解除を約束した2015年の核合意について、トランプ米大統領が実効性を認めない考えを表明した。
 制裁再発動の判断は米議会などに委ねながらも、納得できなければ、破棄に踏み切るという。中東の核拡散防止を目指した歴史的な協約が頓挫しかねない。
 多国間の枠組みを一国の都合でかき乱す。ここでも「米国第一主義」を押し付けるトランプ氏の身勝手さが際立つ。国際社会の取りまとめ役となるべき、大国の信用を傷つけるばかりではないか。
 1979年のイラン革命以来、激しく敵対してきた両国が歩み寄り、多国間で結束した合意だ。「核なき世界」を掲げたオバマ前政権の「レガシー(政治的遺産)」とされ、イラン国民の経済生活を優先したロウハニ大統領の対話外交の成果としても高く評価される。
 イランが濃縮ウランの保有量の削減や国際原子力機関(IAEA)の査察を受け入れ、欧米は昨年1月に制裁を解除したばかりだ。経済関係を回復した日本にも石油取引をはじめ恩恵は大きい。
 この核合意をトランプ氏は昨年の大統領選で「抜け穴だらけ」とこき下ろし、見直しを公約にした。核開発制限の一部が2025年に期限となる条項や、イランの弾道ミサイル開発などへの不信を挙げる。
 疑念があれば、関係国と協議し、解決に努めることが先決だ。合意に貢献した欧州連合(EU)は「合意は履行されている」と批判し、他の合意国も懸念を示す。IAEAも今年8月、イラン側に違反はないとの検証報告をまとめた。
 ロウハニ政権もトランプ発言に猛反発し、核開発計画再開の報復措置も辞さない抗議声明を発表した。イランを敵視するイスラエルやペルシャ湾岸のアラブ諸国との軍拡競争をあおり、中東情勢の不安定化を招きかねない。
 環太平洋連携協定(TPP)や地球温暖化防止の「パリ協定」からの脱退表明をはじめ、自国優先を言い放ってはばからないトランプ氏。米議会共和党も核合意に反発していたとはいえ、オバマ前政権の功績否定という政治的なアピール目的が透けて見える。
 ことさらにイランを非難する背景には、同盟国イスラエルとの関係重視も指摘される。
 核合意の意義は中東にとどまらない。核開発を強行する北朝鮮への孤立化のメッセージも見据えられていた。日本は今年9月、北朝鮮とも友好関係にあるイランに核抑止への協力を要請したばかりだ。
 米国の一方的な約束のほごが前例になれば、北朝鮮に「米国不信」の口実を与えることになる。国連の制裁決議による国際包囲網に水を差しかねず、日本の北朝鮮戦略にも支障が及ぼう。イランとも親しい日本は米国との間に入り、核合意の維持へ果たすべき役割があるはずだ。
カテゴリー: 社説


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