2017.10.16 08:00

【2017衆院選 教育】無償化の財源を考えたい

 日本は教育費への家計負担の割合が大きい。9月に経済協力開発機構(OECD)が公表した調査結果でも、この状況が続いていることが分かった。
 比較が可能な最新の2014年時点で、国内総生産(GDP)に占める教育機関への公的支出の割合は34カ国中、最低だった。
 高齢化が進むにつれて社会保障費は膨らむばかりだ。教育費に予算を割けない世界第3位の経済大国の実態を映し出したといえよう。
 教育費の多くを家計に頼れば、家庭によって教育を受けられる機会に差が出てしまう。裕福な家庭ほど受けられる教育の選択肢は多く、子どもの学歴が高くなる傾向は、はっきりしている。
 厚生労働省による国民生活基礎調査で、15年時点では過去最悪を脱したことが分かったものの、子どもの貧困問題は、なお深刻だ。
 子どもが貧困状態から抜け出す鍵の一つが、教育機会の確保であることは間違いない。教育費への公的負担を拡充させることは、格差の解消に結び付くだろう。
 安倍首相は、再来年10月に消費税率を8%から10%に引き上げる際、見込まれる税収増加分の使い道を国の借金返済から幼児教育・保育の無償化に変更することを公約とした。大学生が対象の給付型の奨学金も大幅に増やすという。
 実現すれば、家庭の負担減にはなるだろう。だが、国の借金返済に充てると決めていた財源を教育の無償化に向けることは、将来世代へのつけ回しによって今の教育費を捻出するのに等しくないか。有権者はその是非を冷静に吟味したい。
 教育無償化を巡っては、自民党が教育国債、こども保険など財源を論議中だった。消費増税による税収の一部活用も出ていたが、使途変更については議論されていない。
 自民党は教育無償化を改憲の項目に盛り込んだ。しかし、旧民主党政権時の10年に成立した高校授業料の無償化は「ばらまき政策」と批判し反対している。
 教育の課題は多岐にわたる。
 文部科学省は東京23区の私立大・私立短大の定員増と大学新設を認めない方針を打ち出した。東京への一極集中の是正策とはいえ、「東京で学ぶ希望の制限につながる」と反対する声も多い。
 教員の過重勤務には歯止めがかからない。授業、事務作業、部活の指導、保護者への対応…。教員の長時間勤務を解消し、負担を減らすことが指導と児童生徒とのコミュニケーションの充実に結び付こう。
 18年度から道徳が小学校の教科となる。子どもによって価値観が違っていて当然なのに、特定の考え方の押し付けにつながらないか。
 教育とは将来をつくり出す営みといえる。目先の選挙にとどまらず、将来を真剣に考え、語っているのはどの政治家、政党かを見極めたい。

カテゴリー: 社説


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