2017.10.14 07:30

【2017衆院選 働き方改革】 待ったなしの社会問題だ

 衆院が解散されるまで、秋の臨時国会最大の焦点とされてきたのが、「働き方改革」だ。
 政府は、労働基準法など複数の法改正案を一本化した働き方改革関連法案を提出する予定だった。解散により先送りになったが、長時間労働や雇用の質の改善は、待ったなしの問題だ。
 電通社員の過労自殺が論議を呼んだように過重労働の解消はいま、社会的な課題といえる。
 格差の是正や人手不足の解消を進めるには、労働者の4割近くを占める非正規労働者の待遇改善も欠かせない。
 「働き方改革」を看板政策に掲げる安倍政権は、法案でこれらに対応するはずだった。ところが、国会提出を前にして衆院を解散した。安倍政権の改革への本気度が問われるのは当然だ。
 法案には問題点も多い。選挙戦を法案の内容や与野党の主張を見極める機会にしたい。
 労働基準法では原則、週40時間、1日8時間を超えて働かせてはならないが、労使協定を結べば残業は事実上、青天井になる。
 厚生労働相の告示で、協定による残業も限度時間があるが、あくまで目安だ。政府は告示で定める「月45時間かつ年360時間」を法律に格上げして原則とし、罰則の適用対象にする方針だ。
 非正規労働者の待遇改善では、正社員と仕事内容や配置転換の範囲が同じなら、賃金や福利厚生も同じ待遇にするよう義務付ける。いわゆる「同一労働同一賃金」だ。
 意義のある改善策だが、例外として「月100時間未満」の残業を認めている。「過労死ライン」の時間数と同じであり、このまま制度化するのは無責任すぎる。
 一部の専門職を労働時間規制と残業代支払いの対象から外す「高度プロフェッショナル制度」が含まれていることも大きな問題だ。
 同趣旨の政策は過去にも提示されてきた。いわば「残業代ゼロ法案」であり、野党や連合が強く反発して実現しなかった経緯がある。
 今回も焼き直しに近い。新たに健康確保措置を設けたが、過重労働を生む懸念は解消されていない。
 法案には、あらかじめ定めた時間を働いたとみなす裁量労働制の範囲拡大も盛り込まれている。
 いずれも経営者団体などが導入を強く求めてきたものだ。いったん導入されると対象が徐々に拡大され、長時間労働や残業代抑制の温床になる恐れが否定できない。
 何より、こうした相反する制度を抱き合わせ、法案を一本化する政権の手法はあまりに乱暴だ。ひとくくりの論議にせず、個別に丁寧な議論が欠かせない。
 新党の結成もあって、改憲や経済政策などが注目されがちだが、労働問題は日常生活に関わる。与野党には突っ込んだ論戦が求められる。
カテゴリー: 社説


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