2017.10.07 08:15

【ノーベル平和賞】 核廃絶へ大きなうねりを

 最悪の大量破壊兵器である核兵器を永久に非合法化し、廃絶に追い込む--。ことしのノーベル平和賞が、国際非政府組織(NGO)の「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」に授与されることが決まった。
 普通の市民を含む、大勢の人々の命を瞬時に奪う核兵器は、非人道兵器の極みだ。ICANは広島や長崎の被爆者とも連携し、「核兵器ノー」の世論を世界規模に広げてきた。その活動が評価されたことを素直に喜びたい。
 一方で、核保有国や日本のように「核の傘」に頼る国々、北朝鮮のように核開発に取り組む国々がある。ICANへのノーベル平和賞は「核抑止」論にとらわれる国々に、突き付けられた批判でもある。
 ICANにとって、ことしは活動の一つの到達点となった年だった。
 史上初めて核兵器を非合法化する核兵器禁止条約が、7月に国連で採択された。賛成したのは122カ国・地域に上る。国内手続きを経て批准した国が50カ国に達した日から90日後に発効する。
 中でも条約採択の原動力になったのは、日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の被爆者たちだ。条約の前文に「ヒバクシャの受け入れ難い苦しみに留意する」と明記され、核兵器の使用や保有、核兵器を使用するという威嚇も禁止した。
 ICANのメンバーとして日本を拠点に活動するピースボートも、「ヒバクシャ地球一周 証言の航海」のキャンペーンを続け、運動を前進させた。
 核兵器のない世界の実現には、乗り越えなければならない高いハードルもある。
 米国など核保有国のほか、米国の「核の傘」に依存する日本や韓国、北大西洋条約機構(NATO)諸国は条約に署名しない意向を示している。核保有国と核抑止論に縛られた国々が背を向ければ、条約の実効性には疑問符がつきかねない。
 ここでもまた、日本政府の対応が問題となる。いうまでもなく日本は唯一の戦争被爆国として核兵器廃絶をうたう。表向きは核保有国と非核保有国の「橋渡し役」といいながら、条約制定交渉にも参加しない政府の矛盾は覆いようがない。
 むろん目の前には、核・ミサイル開発をやめない北朝鮮と、軍事力の行使も辞さない米国との緊張関係がある。しかし核兵器は使用されたら最後、人類と地球上の全ての生物にとって取り返しのつかない結果を招く、より大きな脅威だ。
 核と核、力と力による対立はどれほど強化されようと、結局、核兵器は使うことのできない忌むべき兵器だ。国際社会はそのことを戦後の冷戦から学んだのではなかったか。
 市民の力の結集であるNGOが果たすべき役割は大きい。ICANのノーベル賞受賞は世界の市民の力への後押しだ。日本も合流へかじをきり、国際社会の核廃絶への大きなうねりをつくり出すときだ。
カテゴリー: 社説


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