2017.10.05 08:00

【2017衆院選 財政健全化】黒字化先送りでよいのか

 借金返済に充てるはずの消費税再増税分の一部を、教育無償化の財源に転用する。税の使い道の変更だから国民の信を問う―。安倍首相が衆院を突然解散した理由だ。
 変更により、国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)を2020年度に黒字化するという国際公約も達成できなくなるという。
 教育無償化は「人づくり革命」であり、全世代型社会保障への転換だとも説いた。財政再建とてんびんにかけ、政治決断をしたかのような説明だが、強い違和感がある。
 PBは、借金をせずに社会保障や公共事業などの政策経費を賄えるかどうかを示す。日本の財政は毎年PBが赤字で、国債などの借金に依存している状態だ。
 当然、累積債務が膨らむ。借金残高は1070兆円を超え、国内総生産(GDP)の2倍を上回っており、先進国でも最悪の状況にある。
 安倍政権は「経済再生なくして財政健全化なし」を掲げてきた。アベノミクスを進めて税収を増やし、歳出も抑制して債務を減らす計画だったはずだ。
 債務を減らすにはPBを黒字化しなければ始まらない。これが行き詰まるようではアベノミクスの成果にも疑問符が付く。
 20年度の黒字化が困難なことは、昨年あたりから指摘されてきた。アベノミクスの失速が顕著になったためだ。内閣府がことし7月に公表した試算でも、20年度は8兆2千億円の赤字が残ると見込まれている。
 にもかかわらず、政府は防衛予算の増額を続けるなど政策経費も膨張気味だ。財政規律は緩む一方で、借金の将来世代へのつけ回しを重ねている。
 消費税率10%化を2度にわたって延期したことも大きい。12年に「社会保障と税の一体改革」を実現するため、当時の与野党3党で合意した重い決定がかすむ。
 現状ではPBの黒字化は絶望的なのに、これを棚に上げ、新たな政策のために黒字化を先送りするかのような説明になってはいないか。国の財政運営に不信が募れば、国債取引などにも悪影響を及ぼし、国際的な信用も失ってしまう。
 第2次安倍政権は発足間もない13年1月、日銀と政策連携を結んでいる。デフレ脱却のため、日銀は金融緩和を推進し、政府は規制改革や持続可能な財政構造の確立を進めるという役割分担だ。
 政府が実行できていないのは明らかだ。金融緩和のみ際立つ異様な状況が続いている。
 日銀の政策により低金利が続いている。首相が言うように「力強い経済成長が実現している」なら、債務の圧縮を進めるべきではないか。
 黒字化の先送りでよいのか。原点に立ち返り、財政運営の方向性を問う必要がある。衆院選での重要な論点だ。

カテゴリー: 社説


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