2017.10.04 08:00

【ラスベガス乱射】「銃大国」の惨劇いつまで

 「米史上最悪」。米国で銃の乱射事件が起こるたび、何度となく言われてきた。今また忌まわしい言葉を使わなければならないのがやりきれない。
 ネバダ州ラスベガス中心部で男がホテルの32階から、近くの屋外コンサート会場に向けて銃を乱射し、600人近くが死傷した。不特定多数が集まり、警備が薄くなりがちな「ソフトターゲット」がまた狙われた。
 昨年6月にもフロリダ州のナイトクラブで男が自動小銃などを乱射、死傷者が100人を超える事件があったばかりだ。惨劇が何度繰り返されても銃規制に踏み切れない。「銃大国」の病巣は深い。
 自衛のためとして憲法で「武装の権利」が保障されている米国では、銃犯罪が頻発。子どもを含む年間3万人が命を落としている。近年では過激派組織「イスラム国」(IS)の影響を受けたテロと指摘される事件も少なくない。
 今回もIS側は、容疑者は「ISの兵士」だと主張する声明を出したが、米側は「関連は確認していない」とする。動機も含めて全容解明を急がなければならない。
 ただし、犯人の思想や組織的背景がどうであれ、銃が容易に手に入る米社会のありようこそが相次ぐ悲劇を生む土壌になっている。それは疑いようがない。
 自殺した容疑者が宿泊していたホテルの部屋や自宅からは、計40丁を超える銃や大量の銃弾、爆発物が見つかっている。昨年のフロリダ州の事件で使われたのは、米陸軍特殊部隊の要請で開発された自動小銃の民間仕様タイプだった。
 自分の身は自分で守る―。いかにそれが建国以来の価値観とはいえ、これほど大量の銃や「戦争用の兵器」まで必要か。それはもはや自衛の範囲を超えている、と言わざるを得ない。
 せめて自動小銃のような殺傷能力の高い銃が規制されれば、犠牲者を減らすことができるのではないか。1994年にはそうした銃の製造や新規所有を禁じる法律が制定されたが、10年後に失効した。政界に絶大な影響力を持つ全米ライフル協会や保守派が巻き返したからだ。
 規制強化を目指したオバマ前政権下でも議会で否決された。トランプ現大統領は銃規制の強化どころか、緩和することに意欲を示している。ラスベガスの事件を受けても、サンダース米大統領報道官は「(規制の議論は)時期尚早だ」と述べた。
 政治家たちが議論を始めるまでに、まだどれだけの血が流されなければならないのか。
 95年の国連会議では、日本提出の銃器規制決議が採択された。それ以降、規制推進を日本がリードしてきた経緯もあるだけに、米国への働き掛けを強めたい。
 むろん銃規制論の退潮に歯止めをかけるのは米国民自身である。銃に依存する社会はやはり病んでいる。悲劇の連鎖を断つために、良識と冷静な判断が求められる。

カテゴリー: 社説


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