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2008.02.05 08:28

漁の詩 高知の漁業最前線(37) 第4部(4)北の港は「姉妹都市」

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巻き網船の入港を受けて、一本釣り漁師を励まそうと歓迎ポスターが作られた(宮城県気仙沼市)

 「三重、宮崎、高知…。一本釣りの漁師さんの中には、おやじの代から家族同然の付き合いを続けてきた人もいるよ。われわれ小さい商売をしてる者としては、巻き網よりも、やはり一本釣りの方々を大事にしたい」

 宮城県気仙沼市の中小業者の思いを代弁してくれたのは、斉藤克之さん(67)。港町の情緒漂う銭湯「亀の湯」の経営者だ。

 「市場として水揚げが必要なの、よく分かる。でも町への経済効果に関しては、すぐ入ってすぐ出てく巻き網じゃ駄目だ。カツオにサンマ、サメ…。この町はよそからたくさんの漁師さんが来てくれるから、何とかやっていけるんだ。客が町の人だけなら、この銭湯もとっくにやめてるね」

 番台に座った奥さんが、朗らかな声でこう付け足した。

 「この町で嫁もらった高知の漁師さん、多いんだよぉ。だから高知と気仙沼は、姉妹都市みてぇなもんだ」

   □  □

 ここで一風呂浴びて外に出れば、周辺の飲み屋街に明かりがともり始める時刻。その中の一軒に入ってお品書きを見れば、刺し身、みそたたき、骨汁などカツオが売りだ。ころ合いを見て、亭主(57)に話し掛けた。

 「へえ、高知から来たの、カツオ調べに。ま、私も一本釣りファンだから!」

 即座に力強い返答。わが意を得たり、だ。

 「一本釣りのカツオつったら、この町が全国発信するブランドだべっ。日本で一番おいしいカツオを食べてんの、気仙沼の人じゃねえの?」

 「私もかつて、漁師さんには経済的にもずいぶん助けられたから。今も一本釣りの船が入らなければ、ここなんて寂しい町だよ」

 このように人情が色濃い気仙沼を「第二の故郷」と呼び、上陸を心待ちにする土佐の漁師は多い。そんな土地の人々の温かさを物語る話を、もう一つ。

 釣り船のにぎわいが発展をけん引した気仙沼。そこに巻き網船が入港するようになり、失意を覚えた一本釣りの漁師たちを励まそうと、有志が「市民応援団」を設立したのだ。

 活動の第一弾として今年、「歓迎・かつお一本釣り」と書かれた縦長のポスター五千枚を作製。

 港周辺の商店、コンビニ、理髪店などが競うようにこれを張り、市民や観光客にも「一本釣りの町」をアピール。地元商工会議所はこう説明する。

 「高知、宮崎、三重なんかの漁師さんたちと市民の交流は江戸時代までさかのぼり、漁法も教わったそうです。漁師さんが苦境に陥った今、これまでお世話になった感謝の気持ちを何とか表したい」

  □  □

 よそ者を排除しない開けた気性は、どうやら土佐人と共通。そう考えるとやはり、黒潮ルートを活用した古来の交流に気付かされる。

 気仙沼市と高知県市町村の間に、都市提携などは皆無。とはいえ、海を通じた草の根のような結び付きを「姉妹都市」と表現する市民の感覚に、感じ入ることしきりだった。

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