2017.10.02 08:00

【2017衆院選 金融緩和】「非常時」の政策いつまで

 2008年9月に起きたリーマン・ショックに対応するため、先進各国の中央銀行は国債などを買って市中に資金を供給する量的金融緩和や、低金利といった異例の政策を続けてきた。
 その後の景気回復を受けて米国は既に量的緩和を終え、利上げ局面に入った。欧州も追随する構えで、各国の緩和は転機を迎えている。
 片や日本。アベノミクスに呼応して4年前、日銀の黒田総裁が始めた「異次元」の金融緩和は今も続く。先進7カ国(G7)の中では日本だけで、米欧に比べて出口の見えない「周回遅れ」が際立ってきた。
 金融緩和を続ければ円安や株高によって、輸出企業などを中心に恩恵もある。だからといって「非常時」の政策を、いつまでも続けるわけにはいかない。日銀が国債を購入し続ければ、国の借金を穴埋めしていると見られかねないからだ。
 金融機関が日銀に預ける当座預金の一部に手数料を課すマイナス金利政策も導入された。一段の金利引き下げで企業や個人が資金を借りやすくする狙いだが、金融機関の収益圧迫、保険や年金の運用難など「副作用」も目立ち始めている。
 マイナス金利には国債の利払いが減る効果もある。政府は国債を発行しやすくなる半面、財政規律が緩んでしまう恐れが拭えない。
 その兆候はもう表れている。
 17年度予算の一般会計総額は当初段階で97兆4500億円。5年連続で過去最大を更新した。しかも歳入の3分の1以上が国債だ。近年、国債への依存体質が常態化しているのは、低金利で借金への抵抗感が薄まっているからではないか。
 日銀が金融緩和からの出口戦略を描けないのは、デフレ脱却に向けて設定した物価上昇率2%になかなか届かないためだ。
 物価が上がらないのは原油安のほか、賃金の伸びが鈍く家計の購買力が高まらないこと、新興国から安いモノやサービスが流入していることなど、さまざまな原因が指摘されている。将来の暮らしや社会保障への懸念から、人々がお金を貯蓄に回していることもあるだろう。財政再建が遅々として進まないことも、子や孫につけを回したくない多くの国民の不安をかき立てていよう。
 そうであるなら政府に求められるのは、企業の体力や競争力を高める成長戦略を着実に実行し、景気浮揚を軌道に乗せることだ。医療や介護、年金など社会保障制度の将来像も、きちんと国民に提示しなければならない。
 アベノミクスも金融緩和だけに頼っていては、デフレ脱却などおぼつかないのは明らかである。
 日本と米欧の金利差が広がれば、日本国債に対する売却圧力は高まろう。国債暴落、金利急騰。そんな最悪の事態に陥らないよう、金融緩和からの出口を指し示すことが、衆院選で各党に求められている。

カテゴリー: 社説


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