2016.04.02 15:46

小社会  島根県奥出雲町のJR木次線、亀嵩駅は映画「砂の器」…

 島根県奥出雲町のJR木次(きすき)線、亀嵩(かめだけ)駅は映画「砂の器」の重要な舞台。ハンセン病を患う父親が幼い息子を連れた放浪の旅の果て、親切な巡査に出会う。彼の世話で瀬戸内海の島の療養所に入る父親が、息子と最後に別れた駅だ。

 線路を横切りホームに跳び上がって父の胸に飛び込む息子。うめき声とともに抱きしめる父。ハンセン病へのいわれのない偏見を背景に、父子の情愛がほとばしり出る。

 人間は何か大きなものに支配されている。何とか抜け出そうとしても絶対に離れられない。宿命とはつまり生まれてきたこと、生きているということ…。成長した息子はそう語る。自らの意思ではどうにもできない宿命に翻弄(ほんろう)される人々の思いがこめられていよう。

 1996年4月、ハンセン病患者を強制隔離する「らい予防法」が廃止されてから20年。患者の社会復帰が進んできた半面、根深い差別を恐れ療養所にとどまる人が少なくない。親族が同居に難色を示すケースもあるという。
 
 患者の裁判を隔離先に設けた特別法廷で開いていたのは、裁判の公開などを定めた憲法に違反する疑いがある―。最高裁の外部有識者委員会の指摘も重い。過去をきちんと検証し説明責任を果たさなければ憲法の番人とは言えない。

 ハンセン病患者にいつまでも過酷な宿命を強いることは許されない。人が背負わせた誤った宿命なら、人の意思で改めることができるはずだ。
カテゴリー: 小社会コラム


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