2017.09.29 08:00

【衆院解散】首相の姿勢こそ問われる

 衆院がきのう解散され、来月10日公示、22日投開票の総選挙が事実上スタートした。
 安倍首相は消費税収の使途を大幅に変えることや、北朝鮮への圧力路線に対し「国民の信を問いたい」と述べている。しかしそれ以上に問われるべきなのは、首相の政治姿勢そのものである。
 憲法や国会審議をないがしろにしてきた手法を認めるか否か。それに尽きると言っていい。
 臨時国会冒頭、所信表明や代表質問さえ省いて解散する。そのこと自体に首相の姿勢は表れていよう。
 野党側は森友、加計(かけ)学園問題の疑惑解明を理由に6月下旬、臨時国会の召集を要求した。衆参いずれかの議員の4分の1以上の要求があれば、内閣は臨時国会を召集しなければならないとする憲法53条の規定に基づく。
 内閣は野党の要求を3カ月放置した揚げ句、冒頭解散により審議も拒絶したことになる。これは「実質的な憲法違反」に当たるのではないか。識者からそうした指摘が相次いでいるのは当然だろう。
 「憲法軽視」の最たるものは一昨年、安全保障関連法を強行採決で成立させたことだ。中でも歴代内閣が「違憲」としてきた集団的自衛権の行使を巡っては、憲法学者を含む多くの国民の間に根強い批判があった。にもかかわらず解釈改憲によって容認してしまった。
 ことし6月の「共謀罪」法の成立時には、委員会審議を打ち切る「中間報告」という奇策まで使った。不都合な審議には応じない、という「国会軽視」は今回の冒頭解散にも通じよう。
 安倍政権は安保法も「共謀罪」法も特定秘密保護法も、直前の国政選挙で主要な公約に掲げることはしなかった。ところが選挙で勝利すると法案を国会に提出。慎重な審議を望む世論を尻目に、最後は数の力で押し切ってきた。
 これでは多くの国民が「だまし討ち」に遭ったように感じるのも無理はない。
 安倍首相は衆院解散の意向を表明した記者会見で、持論の憲法改正についてひと言も触れなかった。一方で、9条に自衛隊を明記する案を示してもいる。
 一番やりたい政策は民意が割れるので、選挙戦では「封印」する―。今回もまた同じパターンが繰り返されるとしたら、「国民軽視」も甚だしい。
 論語から出た言葉に「よらしむべし、知らしむべからず」がある。現在ではもっぱら「為政者は民衆をただ従わせればよく、理由や意図を説明する必要はない」という意味で使われる。
 憲法を侮り、国会審議を軽んじ、国民への説明責任を果たさない―。安倍首相の姿勢に重なる。
 5年近く続いた安倍政治を総括した上で、さらに政権を委ねるのかどうか。有権者一人一人に重い判断が迫られている。

カテゴリー: 社説


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