2017.09.27 08:00

【核兵器禁止条約】日本は加盟へかじを切れ

 「ヒバクシャの苦しみ」に寄り添い、核兵器の非合法化と廃絶を誓う「核兵器禁止条約」への署名が始まった。発効に必要な批准国数を満たす50カ国が既に署名し、国際的な核廃絶の輪を広げている。
 だが、そこに世界唯一の戦争被爆国、日本の署名はない。核禁止を先導すべき立場ながら、米国の「核の傘」から抜け出せない矛盾を国際社会にさらしている。
 核兵器を「絶対悪」と糾弾し、核のない平和を求め続けた広島、長崎の被爆地の願いが、この条約に結実したといえる。日本は今こそ「核の傘」の呪縛を解き、条約加盟へかじを切るべきだ。
 核保有国は米英仏中ロの五大国から事実上、イスラエル、インド、パキスタンに広がり、さらに北朝鮮も保有を主張している。五大国による核拡散防止条約(NPT)も2年前に再検討会議が決裂したままで、トランプ米政権やロシアは核戦力の再強化さえ打ち出している。
 その核軍縮の停滞に加え、北朝鮮が無軌道な核・ミサイル開発を繰り返す。7月に条約が採択された後も過激な挑発を強行し続けている。トランプ米政権は軍事行動も辞さない構えで警告し、これに北朝鮮は「核には核を」と敵意を強め、地域の緊張は高まるばかりだ。
 米国は自国の核抑止力堅持へ、日本などに外交圧力をかけ条約阻止を図った形跡がある。日本は米国と共に北朝鮮問題を「現実的」な脅威とし、不参加理由に加えた。核保有国のほか、北大西洋条約機構(NATO)加盟国なども署名を拒む。
 日本政府は公式的には「核保有国が参加せず、非核保有国との対立が深まる」と説明する。だが、米国の締め付けが判断に影響したであろうことは想像に難くない。大国のごり押しと同盟国の追随、という関係が透けて見える。
 世界で核軍縮の「橋渡し役」を公言する一方、条約に消極的な政府の姿勢に対し被爆者は失意をあらわにし、不参加の釈明にも「空虚な言い逃れだ」と憤る。
 核保有国の加盟が見通せず、条約の実効性には懸念がまとわり付く。だが、国連加盟193カ国のうち120カ国以上が賛成し採択された事実は重い。核兵器の保有も、使用も、威嚇も認めない決意表明は国連の歴史に深く刻まれる。
 核保有国などは、各国に北朝鮮に核廃棄を迫るよう求め、自分たちは核武装を決して手放さない。そんな核抑止論は国際社会で説得力を持ち得なくなるだろう。
 「あなたはどこの国の総理ですか。私たちを見捨てるのか」。今夏の「原爆の日」。長崎の被爆者団体の代表が安倍首相に条約加盟を直訴した。高齢の被爆者らに残された時間は少なくなるばかりだ。
 「現実」の困難に対応しながらも目指す先は「未来」であるべきだ。現状に立ちすくんでいては核廃絶の希望は閉ざされる。被爆国が進むべき不戦の道筋に立ち返る時だ。

カテゴリー: 社説


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