2017.09.26 08:00

【首相の解散会見】「大義なし」の名は消えぬ

 安倍首相が記者会見し衆院解散・総選挙の方針に対し、今月28日の解散とその理由などを説明した。
 共同通信社が実施した全国電話世論調査では、この時期の首相による突然の解散に64・3%もの人が「反対」と答えた。「賛成」は23・7%だ。そもそも今、何のための解散かという大義は見えない。
 安倍首相はこれらの疑問に、まさに「丁寧な説明」で答える必要があった。しかしその中身は具体性に乏しく、説得力を欠いていたと言わざるを得ない。
 安倍首相は解散理由について、再来年10月に消費税率を8%から10%に引き上げる際、従来の消費税の使途を大幅に変更することを掲げて信を問うとした。
 現在の計画では、見込まれる年5兆8千億円程度の増収分のうち約4兆円は社会保障を賄っている借金の返済、残りは社会保障の充実に充てることになっている。
 首相はこの税収の使途を、「国の借金返済から幼児教育・保育の無償化などに変更する」とした。急ごしらえで、唐突な話だ。
 これまで自民党では教育無償化に伴う財源について、「子ども保険」などが検討されてきた。消費税の使途変更が議論になった形跡はない。
 民進党の前原代表は党代表選で、消費税増税による教育無償化を訴えていた。方向性が同じでは選挙の争点にもなりにくく、有権者も困惑するのではないか。民進党は「争点はずし」と批判している。
 国の借金返済が減ることで、基礎的財政収支を2020年度に黒字化する財政健全化目標の達成は「困難になった」(首相)との認識を示した。しかし首相はその困難克服の具体的目標や手順を示さず、「先送り」という言葉も使わなかった。
 それこそ国会で議論すべきことだろう。だが首相が取った手段は、臨時国会で所信表明演説や質疑を行わず、冒頭でいきなり解散する乱暴なやり方だ。国会軽視の姿勢は、国民の解散反対論の根拠でもあろう。
 先の世論調査で、森友・加計(かけ)問題を巡る政府の対応について聞いたところ、「納得できない」が78・8%を占めた。内閣支持率は今、北朝鮮の核・ミサイルによる挑発でじわりと持ち直している。
 民進党は離党者が続出し、他党も準備が整っていない。このタイミングで衆院を解散し、森友・加計問題のリセットを図る。そんな「疑惑隠し」の思惑があるのなら、国民を見くびっているに等しい。
 首相は北朝鮮の危機を強調することに時間を割いた。それを日本の少子高齢化と並べて、この解散を「国難突破解散」と名付けてみせた。大仰な言葉に驚く。
 最後に憲法改正について、ひと言の言及もなかったのはどうしたことか。自民党の公約骨子案では、具体的な改憲案の国会提出を目指す方針ではなかったのか。
 このままでは「大義なき解散」の呼び名が消えることはない。 
カテゴリー: 社説


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