2017.09.25 08:00

【対北朝鮮外交】国連は挑発の場ではない

 世界の指導者が一堂に会する場で相手国を「下劣だ」とののしり、対応次第では「完全に破壊」すると脅す。言われた国の指導者は、「史上最高の超強硬的」措置をほのめかす声明でやり返す。
 ニューヨークで開かれた国連総会を舞台にした、トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長の挑発合戦だ。
 国連総会は各国指導者らの一般討論演説などを通じて、国際問題の平和的解決のための外交努力を探る場だ。基本は話し合いであり、過激な発言で挑発し合うのは、場違いな行為である。
 総会でまず注目されたのは、これが国連デビューとなるトランプ氏だ。米国が負担する世界一の国連拠出金を「不公平」などと批判するなど、たびたび国連の価値に疑問を呈してきた。
 トランプ氏は、弾道ミサイル発射などを繰り返す金氏を「ロケットマン」とちゃかし、「悪」という言葉を何度も使って北朝鮮への敵意をむき出しにした。
 極め付きは、米国や同盟国が防衛を迫られれば「北朝鮮を完全に破壊するしか選択肢はなくなる」と発言したときだ。この際には議場からざわめきが起きた。
 約40分間の演説後、各国の反応は総じて冷ややかであり、批判的なものだった。過激な言葉が北朝鮮を刺激することへの懸念が広がり、冷静な対応を求める声もあった。
 国連という国際協調の場で、相変わらず自国優先の「米国第一」の主張をごり押しする姿勢が失望を招いたのだろう。
 これに対し金氏は自国から、トランプ氏の演説を「歴代最も暴悪な宣戦布告だ」という声明で応じた。「史上最高の超強硬対応措置の断行を慎重に考慮する」と表明した。
 問題はもともと、国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁の関連決議を無視し、核・ミサイル開発を続ける自らの姿勢にある。挑発に挑発で応じる資格はあるまい。
 トランプ氏は演説後、イランのロウハニ大統領と個別に会談した。詳しい中身は明かされてないが、オバマ前政権時の核合意を破棄する可能性を示唆していただけに気掛かりだ。対立が激化すれば中東にまた核の火種が再燃しかねない。
 安倍首相は約16分間の演説の8割を北朝鮮問題に割いた。トランプ氏に刺激されたのか、内容も北朝鮮非難のトーンを一段と上げた。
 首相は北朝鮮の脅威はかつてない重大なものだと強調した。ただ過去の米朝核合意や6カ国協議を例に、対話による問題解決の試みを「無に帰した」と切り捨て、「必要なのは対話ではない。圧力だ」と断じたのはどうだろう。
 トランプ大統領が武力行使を排除していない中で、強い言葉を重ねても、北朝鮮が新たな挑発行動に出る可能性が消えるわけではない。国連の場では国際協調主義に沿った、冷静な言葉がふさわしい。

カテゴリー: 社説


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