2017.09.24 08:15

【首相の解散権】恣意的な行使防ぐために

 安倍首相が28日に召集される臨時国会の冒頭、衆院を解散する方針を固めた。
 野党4党は冒頭解散に対し、森友・加計(かけ)学園問題の「疑惑隠し」「国会軽視だ」と強く反発している。民進党は政権公約に、改憲による「首相の衆院解散権の制約」を明記する方向のようだ。
 解散権は「首相の専権事項」とされるが、多くの国民は突然の解散風に戸惑ったり、苦々しく思ったりしていよう。首相の思惑一つで決まる解散のありようについて改めて考えてみたい。
 憲法で衆院解散に関連するのは69条と7条だが、解散権行使の主体や要件については明確な規定を欠いているとされる。
 まず69条は衆院で内閣不信任決議が可決された場合などへの対応を定めたもので、解散権についての直接的な規定とはいえないだろう。これまでの解散をみても、いわゆる「69条解散」の例は少ない。
 一方、7条は天皇の国事行為の一つとして衆院の解散を挙げている。むろん、天皇が決定するわけではなく、「内閣の助言と承認」による。このため、内閣に実質上の解散権があると解釈され、閣僚の任命権を持つ首相の「専権事項」とみなされているわけだ。
 この「7条解散」は第3次吉田内閣が1952年に初めて使った。これに対し、野党議員が違憲として提訴(苫米地(とまべち)訴訟)。最高裁は60年、解散のような極めて政治性の高い行為は裁判所の審査権の外にある、とする「統治行為論」を採用し、憲法判断を避けた。
 この最高裁判決が現在にまでつながっているといってよい。歴代の政権はその時々の都合や党利党略などを優先し、繰り返し解散権を行使してきた。
 自民党は曖昧な部分も残る首相の解散権をより明確にしようとしている。党の改憲草案に新設する「衆議院の解散は、内閣総理大臣が決定する」という一項だ。
 先進国をみると、政権の自由裁量に歯止めをかける流れもある。英国は2011年制定の「議会任期固定法」で、内閣不信任案可決の場合のほか、下院の3分の2以上の賛成がなければ解散できなくなった。ドイツもナチス台頭の歴史を踏まえ、首相の解散権を制限している。
 むろん、解散権を厳しく制約すれば、マイナスに働く可能性も否定できない。解散は政権と国会の双方に緊張感をもたらすし、民主主義を確認する国民の審判の機会につながるからだ。
 先の最高裁判決は、解散の是非の判断について「最終的には国民の政治判断に委ねられる」とも述べている。議会制民主主義の根幹に関わる言及だろう。
 首相が恣意(しい)的に解散権を行使することを防ぐためには、どうすればよいのか。国民一人一人が考え、議論を深めていくまたとない機会といってよい。
カテゴリー: 社説


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