2017.09.20 08:00

【首相の解散意向】国会を軽んじていないか

 安倍首相が28日召集の臨時国会冒頭にも衆院解散に踏み切る意向を固めた。愛媛3区など3補欠選挙が予定されていた「10月22日」投開票を軸に日程が想定される。
 「結果本位の仕事人内閣」と首相自ら自賛する改造内閣を8月に発足させたばかりである。その「結果」も示せていないのに、国民に信を問わなければならない喫緊の政策課題とは何なのか。北朝鮮の核・ミサイル問題への対応にも直面しているさなかに、国民の安全を預かる政治に空白が許されるのか。
 なぜ、今なのか。
 政権選択である衆院選で国民の審判を仰がなければならない争点は見当たらない。今、急ぐべきなのは国会の場での審議である。
 安倍首相や首相夫人の関与の有無が問われる加計(かけ)、森友両学園問題の解明は途上だ。新たな疑惑も次々浮かび、臨時国会が追及の場となるはずだった。そもそも臨時国会は野党が憲法に基づき要求していた。それを解散で葬る格好になる。「疑惑隠し」との批判は当然だ。
 異次元の金融緩和が続くアベノミクスの検証や展望をはじめ、過労死防止が急がれる働き方改革など直面する国政課題の多くは、議論がまだまだ生煮えだ。
 解散する理由として安倍首相は、2019年に予定する消費税10%への引き上げ分の税収を本来の社会保障などではなく、子育て支援にも回すという使途の変更を主要争点にするという。だが、野党第1党の民進党の前原誠司代表が同様の財源論で教育無償化を訴えており、論戦テーマにはなりにくい。
 国会で議論を尽くすことで国民に十分な判断材料を提供し、野党との違いも明確にした上で国民の選択を仰ぐ。それが解散・総選挙に臨む前提条件ではないか。
 「共謀罪」法や両学園問題で急落した内閣支持率が、持ち直しを見せている。一方で、前原民進党は幹事長人事でつまずき、離党ドミノで混乱を深める。野党共闘の方向も定まらない。小池百合子東京都知事の周辺で新党結成を目指す勢力も選挙準備に至っていない。
 憲法改正発議に必要な衆院の3分の2以上の与党勢力を維持できるまでの支持率回復が見込めないなら、臨時国会での野党の追及を逃れ、勝てるタイミングを狙う―。それが首相の解散戦略の本心だとすれば、目的は「政権の延命」という党利党略に他ならない。
 9条への自衛隊明記をはじめ首相の改憲案を争点に盛り込む可能性もある。前回の14年解散・総選挙で消費税増税の延期を最大争点に掲げながら、集団的自衛権行使の安全保障法制を公約に書き入れ、「国民の信を得た」とばかりに国会で成立を強行した「前例」もある。
 首相は22日に訪米から帰国後に判断を明らかにするという。どういう大義を示すのか。国民不在の解散は政治不信を増幅させ、国会の存在意義をもおとしめることになる。

カテゴリー: 社説


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