2017.09.20 08:00

小社会 〈秋刀魚焼く夕べの路地となりにけり〉。市井の生活に…

 〈秋刀魚(さんま)焼く夕べの路地となりにけり〉。市井の生活に素材をとった世話物を得意とした劇作家、宇野信夫の一句である。路地の七(しち)輪(りん)の上でサンマの煙が立ち、家々からも食欲をそそる香りが漂ってくる。そんな庶民の暮らしが目に浮かぶ。

 江戸期までサンマは下々の者が食すもので、身分の高い人は口にすべきではなかった。月並みな引用で恐縮だが落語「目黒のサンマ」は、この前提がないと成立しない。

 目黒の農家でサンマを食べて大満足の殿様は、城に帰ってもその味が忘れられない。家臣に命じて無理やり出させたが季節を過ぎている上に、脂分や小骨を取り除いた魚はパサパサで食えたものではなかった。

 現代の市民の食卓で、まさか自分が落語の殿様のような羽目に陥るとは思っていなかった。ことしのサンマ漁は本場の三陸で水揚げが激減。市中に十分出回らず、値も高い。たまに食べても脂がのっていない、やせ細った代物だ。

 同じ大衆魚のサバも秋が旬だが、野趣あふれるサンマは旬の感覚がより勝る。落語家の立川志の輔さんは「目黒のサンマ」を借りて、旬の大切さを説いた。旬を忘れた人間は「パサついています」(「古典落語100席」)。

 ここ数年の不漁の原因は海流など自然の影響か、台湾や中国も含めた乱獲なのか。いずれにせよ対策を急がないと、季節を取り入れる庶民の潤い豊かな暮らしが、無味乾燥なものになりかねない。


9月20日のこよみ。
旧暦の8月1日に当たります。かのえ いぬ 二黒 友引。
日の出は5時52分、日の入りは18時06分。
月の出は5時34分、月の入りは18時17分、月齢は29.4です。
潮は大潮で、満潮は高知港標準で5時42分、潮位200センチと、18時15分、潮位200センチです。
干潮は11時59分、潮位34センチです。

9月21日のこよみ。
旧暦の8月2日に当たります。 かのと ゐ 一白 先負。
日の出は5時53分、日の入りは18時04分。
月の出は6時35分、月の入りは18時52分、月齢は0.9です。
潮は大潮で、干潮は高知港標準で0時17分、潮位55センチと、12時33分、潮位41センチです。
満潮は6時22分、潮位202センチと、18時43分、潮位200センチです。

カテゴリー: 小社会コラム


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