2016.03.26 16:34

高知市の小学校に広がる学校で朝食提供 お話モーニング 

ごはんとみそ汁を食べる子ども
ごはんとみそ汁を食べる子ども
食べる意思は自立への一歩
 朝ごはん、食べてますか? 子どもにきちんと食べさせてますか? だしの香りと子どもたちの笑顔が、高知市内の朝の小学校にふわっと広がり始めている。 

 高知市の第四小学校を訪ねると、廊下が少し騒々しかった。

 午前7時半。

 始業にはまだ早い。

 1年生の男子3人組が家庭科室の前で「みんなと食べたら楽しいき」と声を弾ませた。

 2014年12月から取り組む「お話モーニング」の時間だ。

友達と食べるとおいしい(高知市の第四小学校)
友達と食べるとおいしい(高知市の第四小学校)
 子どもたちに朝ごはんの大切さを知ってもらおうと、地域の人や大学生が協力し、月に1、2回朝食を提供する。メニューは白いご飯と季節の具材の入ったみそ汁だけだ。

 「お話モーニング」の前日夕。

 授業を終えた高知大生の岩下翔平さん(4年生)と松岡紗希さん(2年生)が第四小学校の家庭科室に顔を見せた。翌朝に備え、みそ汁用のだしをとるためだ。

 10リットル以上。

 1時間はかかる。

 岩下さんはこう言った。

 「子どもたちが、食べることにプラスのイメージを持ってくれたらいいなあと思ってます」

■触れ合いに飢えている

 高知県内の子どもを対象にした「児童生徒の生活スタイル」という調査がある。高知県が2013年度に実施した。

 それによると、小学5年生の1割前後に、朝ごはんを抜く日やまったく食べない日があった。

 同じ調査には「自分なりの良さがあるか」を尋ねる問いもある。自己肯定感を調べる目的で、「良いところがあると思わない」、つまり自己肯定感の低い子どもほど、朝食の欠食率が高かった。自己肯定感を持つ子どもとの差は、約3倍にもなる。

 「お話モーニング」に取り組む第四小学校の依岡雅文校長がこんなことを話してくれた。

 「昔、赴任校に家で朝ごはんを食べさせてもらえない子がいました。その子の弁当も持って行き、学校で食べさせた。2人で話をしながらだと、よく食べる。ある日、用事があって『食べちょって』とその子を1人にし、部屋に戻ると、その子は弁当を食べていませんでした」

 依岡校長は「ただおなかが満たされればえい、というもんではない。子どもたちはコミュニケーションに飢えてるんです」と言う。

 そして昔話の続きをしてくれた。

 「その子は誕生日を家で祝ってもらうこともなかった。だから、自宅に泊めて祝ってあげた。ものすごく喜んだ。でも、次の日には寂しそうな顔をしていました」

 そんな経験があるから、依岡校長は、こう考えている。

 --子どものペースを乱してはいけない。朝ごはんの取り組みも同じ。一時の満足になってはいけない。われわれは「店開き」をしていればいい。ごはんとみそ汁なら子どもにも作れる。自立につながるかどうかが大事なんだ、と。

■1人で料理できた!
 第四小学校の「お話モーニング」を参考にして2015年末、鴨田小学校も学校で朝ごはんの提供を始めた。コメは地域の人からの寄付。2016年に入り、神田小学校も続いた。

 鴨田地区民生児童委員協議会の藤原雅道会長(73)は言う。

 「おなかがすいたら勉強もできん。朝ごはんを食べん子は遅刻も多い」

 南国市の十市小学校では2015年度、ふつうは5年生から行う家庭科の調理実習を前倒しし、4年生から始めた。

 すると、実習の次の日、欠食のみられた児童が、自分で朝ごはんを作って食べたことをうれしそうに担任に報告したという。

 食べて「おいしい」と思い、人からおいしいと言われて子どもたちが「うれしい」と感じる。そこに達成感が育まれていると、十市小学校の栄養教諭、石川利恵さんは言う。

 「自分で食べる、作るという意思を持てたことがいい。自立への小さな一歩です」

 最近は親世代でも朝食を抜くことが当たり前の人がいる。朝ごはんを食べさせてもらえない子もいるかもしれない。

 第四小学校の「お話モーニング」に協力する高知大教育学部の小島郷子教授は「食べることの重要性を子どもたちに体感してほしい」と話す。

 「偏食の子どもも、ここへ来ると、ちゃんと食べるんですよ。食べる楽しさを知って、自立への素地が植えられたら」

 第四小学校の「お話モーニング」はにぎやかだ。あちこちで「みそ汁の春菊、にがーい!」といったおしゃべりが起きている。

 みんなと食べる朝食は、きっとそれだけで楽しいのだ。

カテゴリー: 教育


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