2016.03.25 10:34

小社会 〈早池峰は四月にはひってから/二度雪が消えて二度…

 〈早池峰は四月にはひってから/二度雪が消えて二度雪が降り/いまあはあはと土耳古玉(タキス)のそらにうかんでゐる〉。宮沢賢治の詩集「春と修羅」に収められた詩の一節。「タキスの空」とは何だろう。

 タキスはトルコ石のこと。「宮沢賢治 ことばの宇宙展」(県立文学館で4月17日まで)に展示されている実物を見てやっと分かった。その吸い込まれるような深い青色は、まさに晴れ渡った空にぴったりだ。

 明け方の赤みを帯びた空は琥珀(こはく)に。雄大な積雲は玉髄(ぎょくずい)に。輝く雨はトパーズに。幼いころから鉱物採集が好きだった賢治は、身近な自然の姿を岩石や宝石に例えた。彼にとって鉱物は、さまざまな心象風景をスケッチする絵の具のようなものだったという。

 南国のタキスの空に映える淡いピンクの花は、どんな宝石に重ねたらいいだろう。高知城三の丸のソメイヨシノの標本木。きのう5輪咲いてようやく開花宣言が出た。各地の桜に後れをとっただけにやきもきした人は多かったはず。

 学びやの卒業式にも間に合わなかったけれど、満開の頃合いには新年度がスタートする。新社会人たちの門出を華やかに彩ってくれるだろう。

 今年は賢治の生誕120年。1896年、明治の三陸大地震の年に生まれ、昭和の三陸大地震が起きた1933年に亡くなった。災厄に挟まれた人生を思うにつけ、穏やかな四季の移ろいを慈しんだ賢治の気持ちが分かる気がする。
カテゴリー: 小社会コラム


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