2016.05.16 07:55
奇跡の笑顔 全盲・重複障害を生きる(33)もう、後には引けません!
「めちゃくちゃ忙しいらしい。どこまで話が聞けるのか」と思いながら訪ねた茨城県の重症児デイサービス施設だったが、行って良かった。
高知に戻った後、参考にとビデオで撮った画像を見せると、山崎さんは別の視点で驚いた。「どうしましょう。すごすぎる。完全にレベルが違う!」
医療的ケア児主体の受け入れは同じでも、「あれほど医療度の高い子どもを何人も。まるでこども病院の分院ですね。高知であの人材をそろえるのは無理…」とたじろいだのだ。
そうは言いつつもガッツは人一倍。「やれる範囲でベストを尽くす」と4月と5月、県外へ勉強に出掛けた。4月20日は大阪へ。福祉機器展があることを知り、午前9時すぎの高速バスで出発。往復14時間の日帰り強行軍だ。現地滞在は3時間。時間を惜しんで広い会場を駆け巡った。
「あのミキサーはいいですねえ。精度が全然違う。重症児用のペースト状にするのにちょうどです。8万円かあ」とうらめしげ。入浴コーナーでは「この浴槽は夢ですねえ。ボードに体を寝かせて固定して、機械で上げ下げ。気管切開の所だけ水が入らないように見守ればいいから、すごく安全なんです。えっ!? 1千万円」と仰天しながら、「今は難しいけど、いつか必ず…」。
感染症対策、食器、バリアフリーコーナーでも目を輝かせ、説明を聞き、パンフレットを次々ゲット。「すごいなあ。夢が膨らみますよねえ。こうやって目に焼き付けることが大事なんですよね」と自分を納得させるかのようだった。
帰宅は午後11時すぎ。この間、音十愛ちゃんはどうしていたかというと朝、盲学校へ送り出し、放課後は「幸のつどい」、夕方からは「土佐希望の家」のショートステイとつないで乗り切った。続く5月半ばの「ふれ愛名古屋」の3日間研修も同様。レスパイト施設あればこそだった。
「濃かったですねえ。みっちりでした」と山崎さん。ノウハウの詰まった資料をもらい、経費節減法、人材採用の心得、リーダー論まで、まるで経営者セミナー。「事業ってこういうことなんですね。ここまでしていただいたら、もう後へは引けません。結果を出さないと!」
岡田さんも同じ。研修前は「山崎さんが一生懸命だから、不安はあるけど信頼してついて行こう」だったのが、理念とノウハウを知り、「成功へ具体的に何をすべきかはっきり分かりました。頑張りたい、という思いが強くなりました」と確信に変わった。
それが山崎さんには何より励ましになったという。
「私が独りでのぼせている、みたいに思われていたかもしれません。そうでないことが分かってもらえた。すごく心強いんです」