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2016.05.16 08:05

奇跡の笑顔 全盲・重複障害を生きる(31)わが子に初めて感謝した

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紺野さん親子(前列右側の3人)は、事業所開設で幸せいっぱいの生活に(茨城県ひたちなか市、重症児デイ「kokoro」)

「地獄」の向こうの幸せ

 茨城県の重症児デイサービス「kokoro(こころ)」代表理事、紺野昌代さん(39)が体験した「地獄」。その発端は2016年9月。離婚協議の始まりだった。

 2000年から7年間で出産した3人の子はいずれも難病で寝たきり。次第に夫婦間はきしみ、3年前に長男が死亡。2016年12月には離婚。子ども2人を引き取ることになった。

 それまでは、同居の義母が見てくれたが、離婚後は無理だ。実家は遠いので応援は頼めない。看護師なので深夜勤もある。仕事中の預け先がなく、行き詰まることは目に見えていた。そこで、離婚協議と並行する形で手を打つ。10月、ふれ愛名古屋の鈴木由夫理事長に会い、重症児デイ開設を相談したのだ。

 理事長を知ったのは、札幌市の重症児ママからの情報だ。彼女がデイ施設開設を進めているのを聞き、「それなら私も」となった。

 12月半ばに退職し、3月オープンを目指した。開業までわずか2カ月半。時間がないのでNPO法人はあきらめ、すぐに登記ができる非営利型の一般社団法人を選んだ。

 スタッフ探しと事業所探し、わが子の世話、家の引っ越し、1千万円の借金。そして、運営は大丈夫なのか。年末、不安で参ってメンタル不全に陥った。「なんということを始めてしまったんだろうって。全部自己責任なんですよね。でも、2週間で治りました」

 看護師探しは、県立こども病院を辞めて間もなかった元同僚を見つけ、道が開けた。わが子の世話は、1人は放課後等デイに預け、もう1人は入院で乗り切ったが、困ったのは物件と機能訓練士探しだ。

 物件は決定寸前で2件連続、他の契約者に決まり、がくぜんとした。機能訓練士はオープン1週間前まで見つからず最大の心労に。フェイスブックで苦境を訴えやっと見つかったが、再び心身不調に陥った。

 「かなり綱渡りでしたね」と昔話のように笑う紺野さん。難産ゆえに報われるものも大きかった。

 「病院時代は、子どもさんに会うのは体調の悪い時や定期外来のわずかな時間だったでしょ。ここで一日中一緒にいると発見が多いんですよ。『この子はこういうことが好きなんだ。喜ぶんだ』と。すごくいい顔するんです。本当に楽しくて」

 そればかりか、わが子も大勢のスタッフに見てもらえる。「家だと私だけ。騒いだり話し掛けることも少なかったのが、ここは刺激がいっぱいなんです」

 そして、事業所開設にあたり多くの人と出会ったことも人生を変えたという。「いろんな意見も聞けたし、自分の生き方を見直すこともできたんです。私、障害児を3人も産んで、その人生経験を初めてここで生かすことができました。自分の子に初めて感謝できたんです」

 パンフレットには離婚のことも載せてある。「隠したくなかったんです。これだけ苦労してきても元気に笑って明るくいられるよ、というところを、お母さんたちに知ってほしかったから」

高知のニュース 奇跡の笑顔

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