2016.03.21 11:08

高知短期大学で最後の入学生が卒業 19~79歳の83人

最後に入学した学生らを送り出した卒業式(高知市の高知短大)
最後に入学した学生らを送り出した卒業式(高知市の高知短大)
 廃止が決まっている高知短期大学(高知市永国寺町)に2年前に入学した高知短期大学最後の学生たちの卒業式が3月20日、行われた。卒業したのは19歳から79歳までの83人。それぞれが思い出を振り返りながら別れを惜しんだ。長期履修の学生らが残るため2016年度も短大は存続するが、規模の大きな卒業式は今回が最後となる。

 高知短大は1953年に開学し、若者から働く人、定年退職者まで、さまざまな人の学びの場となってきた。ただ、学生ニーズの変化などを理由に県が廃止を決定。2014年度を最後に募集を停止した。夜間の学びの場は、高知県立大学の夜間主コースに引き継ぐ。

 卒業式では、南裕子学長が「本校には働く者のとりでとしての歴史があり、学びへの志の高さが誇れる伝統。高知県立大学でも引き継いでいきたい」とあいさつした。

 卒業生を代表して答辞を述べた渡辺修子(のぶこ)さんは「社会人として働く中でやりたいことが見つけられず、大学に進学しなかったことを後悔し始めていた」と入学の思いを振り返った。「先生と学生の距離が近く、親しみやすい雰囲気で学べ、初心に帰れた。かけがえのない時間だった」と語り、涙をぬぐった。

 式にはこれまでの卒業生らも集まり約170人が出席。退場する卒業生を大きな拍手が見送った。 

■多様な学び支え続け「身近な学校」「再挑戦の場」卒業生ら感慨■
 「一番身近な学校だった」「再チャレンジさせてくれた」―。年の違う学生が、歩んできた道の異なる人たちが刺激し合い、学び合った。高知短大で過ごした2年間はそんな時間だった。

 石井裕美さん(74)は2年前、高知短大の廃止を知り、「これが最後のチャンス」と入学を決めた。大方高校の夜間部で3年生になったころ。短大に通うための“単身赴任”を妻も応援してくれた。

 四万十市の中学校を卒業し、16歳から貨物船の船員として働いた。「中学校卒業生の3分の2が就職していた」という時代だったが、進学への思いを捨てられず、20代になっても何度か高校の願書を取り寄せた。しかし、港から港へ転々とする生活の中、次第に諦めていった。

 結婚を機に建設業に転職すると、会社を立ち上げて必死に働いた。念願の高校に進学したのは、現場を引退した69歳だった。

 「やっぱり先生や人と話しながら学ぶことがしたかったんでしょう。ずっと自己流で生きてきましたから」

 学ぶ意欲はどんどん高まり、大学では経済に興味を持ち、経済学のサークルにも入った。2年のつもりが気が変わり、春からは高知県立大に編入する。

 「自分じゃ考えつかんような若い人の発想に触れるのが新鮮で。高知短大は一番身近な学校やった。なくなるのはやっぱり寂しい」

 県外の大学への編入を目指すという中越みずきさん(23)は「短大は再出発の場でした」と振り返る。

 中学は私立の進学校。「大学入試を見据えたようなスピード」を感じ、次第になじめなくなった。高校には進学しなかった。アルバイトをしながら「もう一度学びたい」と短大に入学したのは、21歳だった。

 「自分は遅れている」という思いは入学後も消えなかった。ある日、看護師をしながら学ぶ年上の同級生に「どんな経験も無駄にならない。いつでも勉強はできる」と励まされた。

 「どんな人でも受け入れてくれる雰囲気があった。先生との距離も近く、勉強ってこんな面白かったのかと思いました」

 戸田崇則さん(20)は高校を卒業してすぐ高知短大に進学した。この春からは県内のIT関連の企業に就職する。大学のゼミや授業では、地域おこしを学ぶフィールドワークに参加し議論を重ねた。

 「みんないろんな事情がある分、本当に一生懸命で、自分も頑張らないかんと思って。いろんな人と出会えたことが財産です」

 62回目の卒業式。“最後の入学生”たちは握手を交わし、互いの門出を祝った。

カテゴリー: 主要教育


ページトップへ