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2016.05.16 08:35

奇跡の笑顔 全盲・重複障害を生きる(25)仕掛け人 自信たっぷり

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シンポジウムまで開いて重症児の母親たちを後押しする「ふれ愛名古屋」の鈴木由夫理事長=左端(2月、東京・墨田区区役所内ホール)

■「絶対うまくいくんです」■
 東京のシンポジウム出席は山崎理恵さん(50)=高知市=にとって大正解となった。
 
 ところで、その主催者であり、「なければ創ればいい」の合言葉で山崎さんの心をつかんだNPO法人(4月から社会福祉法人)「ふれ愛名古屋」の鈴木由夫(よしお)理事長(66)とはどういう人物なのか。
 
 シンポの運営は手慣れていた。話もうまい。障害児者施策の情報に精通し、目標達成への近道も端的に教えてくれる。発表者4人の旅費、宿泊費も全額主催者側負担で気前もいい。福祉関係者というよりも腕立ちの事業家という印象だった。
 
 だが一方で、会社経営に失敗し自殺未遂の過去を持つらしい。妙に気になる。シンポの終わった夜、話を聞かせてもらった。
 
 いきなり過去を聞いては失礼なので、まず山崎さんの事業の成否を尋ねた。すると、笑いながら言った。「皆さん、今まで主婦で子育てしてこられた方ばかり。心配で心配でしょうがないんですよ。でもね、重症児のお母さんがやるのが一番いいんです」
 
 なぜか。「素人ながらも日々、新生児集中治療室の看護師さんのようなケアをしてきたからですよ。重症児を見たことのない看護師さんと、10年間、わが子を見てきたお母さん、どっちのケアがうまいと思います? お母さんに決まってるじゃないですか」
 
 山崎さんの場合、看護師というのがさらに強み。「彼女は音十愛ちゃんも見てきたし、それで今、重症児デイで働いているでしょ。そこが大きいんですよ」
 
 1千万円の借金も気になるが、「確かに普通の人が聞くと驚くでしょう。だけど、今は利息が安い。政府系の金融機関を紹介するから10年返済で月々9万円かな。楽勝ですよ」と、あっさり言う。そんなにうまくいくものなのか。
 
 「一番の問題は収入ですよね。採算ラインがあるんですよ。定員は5人で、1日当たり平均3・5人の利用者があれば大丈夫。それを達成するには10人の利用契約があればいい。1日の収入がこれこれで、週休1日だと掛ける25日。人件費率の健全指数は6割で家賃は1割、経費が2割。収益にあたる部分が1割で、そこから返していけばいいんです。年中無休だとスタッフ確保が難しい。最初は週1日の休みを入れてですね…」とスラスラ。
 
 「ご心配はもっともですが、うちが全部、ボランティアで教えてあげるし、手伝ってあげるんですよ。うまくいくに決まってます」と自信たっぷりだった。
 
 何だか頼もしい。まるでコンサルタント。仕事としても十分、成り立ちそうだ。実際、ネット上ではそれをビジネスとして売り込む会社もある。だが、そんなつもりはないという。なぜか。
 
 「僕もですね、1度事業に失敗してね。人に迷惑ばかりかけたんですよ。そしていろんな人に助けられた。今度は僕の番なんです。僕は人のためになんて思ってないですよ。僕の幸せのためにやらせてもらっているんですから」
 
 波乱の過去を自ら語り始めた。

高知のニュース 奇跡の笑顔

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