高知龍馬マラソン2017特集

 高知県最大の市民マラソン大会「高知龍馬マラソン2017」が2月19日、42・195キロの日本陸連公認の高知龍馬マラソンコースで行われ、初めての大台超えとなる1万140人が早春の土佐路を駆け抜けた。 



1万人のランナーがはりまや橋を通過 

駆け抜けて 笑顔、充実




初の大台10140人参加

 5回目の今回は「参加1万人」を目指し、制限時間を1時間緩和し7時間に。その効果もあり、前回を約2千人上回る、過去最高の1万1586人がエントリーした。

 午前9時。坂本龍馬に扮(ふん)した尾﨑正直知事が号砲を鳴らすと、色とりどりのウエアや個性豊かな仮装などに身を包んだランナーが大きな塊となってスタート。

 「頑張れー」「諦めるなよー」。沿道の大きな声援を背に、タイムを競う人、マイペースを刻む人、笑顔でのんびり歩く人…。1万140通りの自己表現で大地を蹴った。

 男子は池本大介選手(鳥取・自衛隊米子)が2時間28分6秒で、女子は的場知穂選手(大阪・マラソン王国)が2時間58分51秒で、それぞれ初優勝した。

 制限時間内に春野運動公園に飛び込んだのは9589人。完走率は94・6%と昨年(85・4%)を大きく上回った。

 高知龍馬マラソンは高知陸上競技協会、高知県、高知市、南国市、土佐市、高知新聞社、高知放送などの主催。

紺碧の太平洋を眺めて(24キロすぎ、19日午前11時20分ごろ)

潮風を力に、もう一踏ん張り(33キロ付近、19日午後0時40分ごろ)

空も海も青々と

太陽と声援が降りそそぐ

ラストスパート

個性的な人々も

それぞれのゴール

昨年心停止の男性が再挑戦で完走

 感謝の思い伝えたい  2016年の龍馬マラソン中に倒れ、一時心肺停止に陥った森岡啓さん(65)=高知市=が、再びマラソンのスタートラインに立った。「無理はしません。でも、もし完走できたら、小さく記事にしてくれませんか。命を助けていただいた方々に、感謝の気持ちを伝えたくて」

 1年前の龍馬マラソン。森岡さんは高知県南国市十市で倒れた。急性心筋梗塞で心肺停止状態だった。近くを走っていた医師や看護師、消防士らが交代で心臓マッサージをしてくれ、電気ショックで心臓が動き始めた。脳に血液を絶え間なく送り続けたおかげもあって、大きな後遺症もなく1カ月弱で退院できた。
【高知龍馬マラソン2016の医師ランナーたちが救命リレー「完走より命」】

 「真っ先に助けてくれた人たちにお礼を言いたかった」と森岡さん。だが救命措置を行ったランナーたちは名前も告げず、その場を離れていた。報道などで名前の分かった医師ランナーの西本陽央さん(37)=高知市=ら数人には会いに行けた。だが多くの人は名前も分からなかった。

 森岡さんは、主治医の勧めもあって4月ごろから軽いジョギングを再開し、間もなくして5~6キロを走れるほどに回復。職場にも戻った。普通の暮らしができるうれしさをかみしめる一方、「お世話になった方にお礼ができていない」ことが心残りだった。

 8月の検査入院でも異常がなかった森岡さん。龍馬マラソンへの再挑戦を考え、1週間に3~4回、8~10キロを走った。妻の道子さん(65)が減塩メニューなどで支えてくれたおかげもあって、血液検査の結果が1年前よりも良くなっていた。2月12~14日にも検査入院し、主治医の許可を得た。

 1年ぶりのマラソンコース。「今年は大丈夫だろうか」と不安もよぎったが、十分に水分をとり、2016年倒れた13キロ地点を越え、5時間20分でマラソン初完走を果たした。

 「完走して元気な姿を見せることが、お世話になった方への恩返しと信じて走りました」と森岡さん。「みなさんが私をゴールに運んでくれました」

 完走しても恐縮がちな森岡さんだが、その姿に力をもらった人もいる。1年前に森岡さんを助けた医師ランナーの西本さんは、折り返し地点近くで先を行く森岡さんを見つけ、追い掛けた。疲れているはずなのに、足が前に出たという。

 「森岡さんの後ろ姿を眺めながら走るのが、ほんとうれしいというか、勇気が出て」

バージンロードは42.195キロ

  松江市の三吉博之さん(42)と野原幸恵さん(37)は4月に結婚を控えている。だから2人は、銀色のタキシードと薄紫色のドレス姿で大会に出場。沿道から多くの祝福を受けながら完走し、「最高に幸せ」。起伏のある道も、思わぬハプニングも共に乗り越え、2人の愛がより深まった。 

 自営業の三吉さんと美容師の野原さんはマラソンを通じて出会った。結婚もドレスとタキシードを着てマラソンに―。2人は結婚式を挙げる代わりに、3月に開催されるサイパンマラソン(50キロ)への参加を決めた。

 三吉さんは以前から高知県を再々訪問しており、「高知の人のお酒の飲み方が大好き。よさこい祭りにもテレビ番組の『歌って走ってキャラバンバン』にも出場しました」という高知ファン。三吉さんが昨年の高知龍馬マラソンにも参加していたことから、2人はサイパンに加えて、今大会へも参加することにしたという。

 途中、ドレスのパニエ(腰枠)が壊れるハプニングもあったが、沿道から寄せられた「おめでとう」「ハッピーウエディング!」という祝福の声援が背中を押し、2人はそろって5時間弱でゴール。「すごく気持ちよかった」とほほ笑む野原さんを、三吉さんが優しく見つめていた。

走って、つながって、楽しんで   家族と、仲間と、沿道と…

ランナーも思わずにっこり

温かく、ちょっと強引 高知流のおもてなし健在

 力を振り絞るランナーを喜ばせるのが高知流のおもてなし。「龍馬マラソンを応援しないと1年が始まらない」という声もある。声援や鳴り物、プラカード…。温かく、時にちょっぴり強引な“応援団”は2017年も健在だった。

 「頑張って!」。高知市菜園場町で、真っ黄色の羽毛の衣装を着て声援を送った明智乙希(いつき)さん(35)はランナーより目立っていた。「最初は嫌だったけど、今はやらずにいられない」

 その数キロ先で、「ガン、ゴオン!」と耳慣れない応援の音がしていた。一斗缶を角材でたたく水田守さん(76)は第1回大会からこのスタイル。「皆、喜んでくれる。時々、嫌な顔する人もおるけどね」とにんまり。缶で切った指に血がにじむ。

 プラカードなどの応援も「しんどいのは気のせいだ」「龍馬たちがんばれ」と熱い。「ゴールしたらビールが飲めるぞ」の高知らしい文字も揺れた。

 「音」でエールを送ったのは三里中や高知県立大など。香長中吹奏楽部は50人で人気ドラマの主題歌「恋」を熱演。「恋ダンス」も披露し、ランナーが一緒に踊って盛り上がる場面もあった。部長の尾崎遥さん(14)は「音が届いた」と目を輝かせた。

 ブンタンやゼリー、せんべい、カステラなどを机いっぱいに並べて振る舞ったのは春野町東諸木のグループホーム「春の森」。自身も県外大会に参加するという山口絵里奈さん(40)は「いつもはお世話になる。お礼しないとね」。

 高知流のおもてなしは県外ランナーに好評で、「『ありがとう』っていう声援は初めて。感動した」「おばちゃんが頼んでないのに脚にスプレーしてくれた。高知らしい」。“感激”の声があふれた。

 海岸沿いでコースを見つめた小崎恵敏(しげとし)さん(82)は「全国から来てくれよる。誰かれなしに終点まで行ってほしい」と、年配者や足を引きずる人が通るたび、パンパンパン―。鉄工所で40年以上酷使した手で、柔らかなエールを送り続けた。
 

 

 

高知県民が第1回の4倍強

 過去最多の1万人超が土佐路を駆け抜けた2月19日の高知龍馬マラソン。大会の隆盛を支えているのは高知県内の“龍馬”たち。高知龍馬マラソン2017はエントリー数で高知県内勢が52%と、初めて県外組を上回った。仲間の出場に刺激されたり、応援する側からされる側へと奮起したり…。大会の存在が、“足に覚えのない”県民の背中を押す好循環が生まれた。

 「マラソン、なめてました」。8・6キロの関門で時間切れとなった杉本英昭さん(47)=香美市=は今回が初出場。職場の同僚が出場することで「俺も!」と飛び込んだが、練習はゼロ。「種崎まで行きたかった」とうなだれ、「来年はちゃんと練習して来る」と再挑戦を誓った。

 高知市の沢本恵さん(47)は「去年沿道で応援して、走りゆう姿に感動して。絶対出よう、と」。週3日、朝5時から5キロ走って、子どもの弁当を作ってという生活を1年間続けた。初挑戦は17・0キロの関門で終わったが、「体力的にはまだいける。次はペース配分も考える」。再起に向けまたトレーニングの日々が始まる。

 ビギナーたちの参加もあって、県内ランナーのエントリー数は今回6042人と、2013年の第1回大会(1425人)の4倍強に膨らんだ。「目標1万人の達成に協力したい」「県民なら一度は走ってみようか」。そんな声があちこちで聞かれた。

 高知龍馬マラソン2017からはゴールの制限時間が6時間から7時間に延長され、“敷居”も下がった。森正彦さん(68)=高岡郡佐川町=は「7時間なら…」と出場を決意した一人。6時間2分で見事完走し、「龍馬マラソンは人生でやり残していたことの一つ。次はよさこい祭り」と笑顔を見せた。

 2回、3回と継続して出場する県民の存在も大きい。

 黒岩千賀さん(51)=高知市=は一昨年初めて参加し「二度と走らん!と思った」のに、3連続出場となった。背中を押し続けるのは沿道の声援。「『ありがとう。また来てよー』とか、『勇気をもらえる』とか言われて。こっちが勇気をもらってるのに」。完走タイムは初めて5時間を切った。

 4回連続で出場した消防士の吉良純一さん(31)=吾川郡いの町=にとって、走ることは「自分を律するための手段」。完走タイムは2016年は3時間半を切ったが、2017年は3時間31分で「この1分が悔しい」。2018年以降も年に一度の力試しを続けるという。

 健康やダイエット、「仲間とのお祭り」「人生変わるかな」―。駆けだす理由はさまざまでも、多くの県民は年に一度の晴れ舞台に龍馬マラソンを選ぶ。沿道のどこかから「来年は私も…」の声が上がる。「龍馬の輪」がさらに広がる。

 

 

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