2014高知豪雨
2014年10月7日朝刊

災害時における集落孤立備えの課題は 家庭事情に応じた備蓄を

 8月の台風11号の豪雨で、高知県安芸郡北川村の国道493号が崩壊し、北川村北部の平鍋集落(14世帯31人)がほぼ6日間、完全に孤立した。約1万8千もの土砂災害危険箇所が指定されている高知県では、こうした土砂崩れがいつ起きても不思議ではなく、中山間地域の小集落は、今後も孤立に備える必要がありそうだ。“平鍋ケース”から浮かぶ課題を探った。

 11号が高知県東部に迫っていた8月9日、平鍋集落の林田慎一郎区長(69)は不安な夜を過ごしていた。昼すぎから続く雨はやむどころか、経験したことのない激しさで落ちてくる。集落から見て奈半利川の上流、直線距離で約11キロ離れた馬路村魚梁瀬では、平年の月間雨量の約1・5倍に相当する924ミリが、ほぼ1日で降っていた。

 リスト作成

 朝になると一人、また一人と住民が集会所に集まってきた。全員の無事を確認し、林田区長らは個人所有のチェーンソーで国道上の倒木を切断しながら、奈半利川に沿って上下流の様子を見に行く。上流は国道上に大量の土砂。下流は路面が崩れ川に流失していた。電気も止まっており、生後3カ月の乳児や90歳近い高齢者を含む集落は完全に孤立した。

 北川村は2013年10月、災害時に周囲の助けが必要な人工透析患者や独居高齢者、障害者らのリスト作成に着手。現在は北川村全体で91人を登録している。このうち、該当者がいる平鍋など北部地域の計38世帯には、10日朝から北川村職員が手分けして電話連絡。幸い、常備薬不足や体調不良など、状況が切迫している住民はいなかった。

 携帯電話も通じた。平鍋集落は村に必要な物資を要請、11日午後にはヘリで飲料水や非常食、ガソリン、電池などが運ばれた。同じく午後には電力も復旧して冷蔵庫が使用できるようになり、結果として、集落が物質的な困窮に見舞われることはなかった。

 大きいギャップ

 しかし、機能しなかった備えもあった。北川村は中北部の小島地区と島地区の集会所を“拠点倉庫”と位置付け、92人分の非常食や飲料水、毛布、マットを備蓄。だが今回、国道が寸断された平鍋集落は当然、車で数分の小島集会所を活用できなかった。また拠点倉庫がカバーする地域の人口は約200人で、備蓄量自体が不足していた。

 北川村が備蓄増を検討する一方、高知大学の大槻知史准教授は「自治体の備蓄とは別に、各戸の事情に応じた備蓄が重要」と訴える。アレルギーを持つ子供やそしゃく力の弱い高齢者に対応する食料、持病の医薬品など、その人、その家庭にとっての必需品を詰めた「防災缶」の取り組みを勧める。

 災害情報の発信にも課題を残した。平鍋集落の農業、久保田和孝さん(32)は「本当に欲しい情報は、全く入ってこなかった」と話す。「テレビでは『高知県では〜』とか、大きな情報しか流れない。僕らがすぐに知りたいのは、目の前の道路や村内の状況。ギャップは大きかった」

 北川村総務課の担当者も「今回の台風では、住民から道路状況を問い合わせる電話が多くあった」と振り返る。集落ごとに設置している屋外スピーカーや各戸の行政・防災情報受信機、エリアメールなど各種のツールはそろっているが、職員が集めた被害状況を発信する取り組みがなかった。

 総務課は今後、災害時に、刻々と変化する被害情報を集約した上、「住民に随時、伝達できる方法を考えたい」とする。

 孤立への備えは、物資備蓄と情報提供の「きめ細かさ」がカギと言えそうだ。

【写真】土砂が崩落した国道493号。約500メートル下流の平鍋集落が完全に孤立した(北川村平鍋)





・「2014高知豪雨」前の記事へ
・「2014高知豪雨」トップへ
・「高知新聞」ホームへ

 

総カウント数
本日は
昨日は