2014高知豪雨
2014年9月07日朝刊

「水門閉めるぞ!」8月豪雨の浸水で緊迫の夜 四万十町

市町村の避難判断 重要に

 「排水路の水が流れんなった! 水門を閉めるぞ!」
 台風11号が近づいていた8月9日深夜。高知県高岡郡四万十町の災害対策本部の無線から切迫した声が響いた。

 声の主は、暴風雨の中で現場の警戒に当たっていた佐竹一夫建設課長。ただならぬ事態になっていることが、中尾博憲町長や職員に一斉に伝わった。

 四万十町窪川地域の中心部の雨水は通常なら、排水路を通じて四万十川の支流、吉見川に流れ込む=地図参照。

 佐竹課長が、排水路の水門閉鎖を判断したのは、増水した吉見川からの逆流を防ぐためだ。しかし、水門閉鎖は内水による浸水リスクを伴う。2004年10月の台風23号では、排水路があふれて200棟以上が漬かっている。

 水門を閉めると同時に、排水ポンプの稼働が始まった。ポンプがうまく機能すれば、逆流を防ぎつつ、内水もはかすことができるはずだったが…。

 窪川地域では午後11時までの3時間にわたり、時間雨量31〜41ミリの激しい雨に見舞われていた。排水ポンプの処理能力を超える豪雨で、排水路の水かさはじわじわと上がり続けた。

  ■   ■

 市町村が住民に避難を促す情報は、切迫度が高い順に「避難指示」「避難勧告」「避難準備情報」の3種類がある。

 四万十町は台風11号の接近に備え、9日午後2時50分、高齢者や障害者らに避難を促す「避難準備情報」を出した。危険が伴う夜間の避難を避けてもらおうと、屋外スピーカーなどで早めの避難も呼び掛けていた。

 「日付が変わるころには暴風雨のピークは過ぎているのでは」
 次々と入ってくる気象データからそんな予測もあった。しかし、台風はゆっくりと四国沖を北上し、ちょうど日付が10日に変わるころ、事態は一気に緊迫の度を増した。

 排水路から水があふれだし、四万十川と吉見川の合流地点の水位も、氾濫の危険があるとされる9・5メートルに迫っていた。

 「(現場からの)無線の声が聞こえん!」
 外は猛烈な風と雨。災対本部にいら立ちや焦りの声も出ていた午前1時すぎ、四万十町は「町中の浸水は避けられない。吉見川の氾濫の恐れもある」(中尾町長)として「避難指示」を出し、職員や消防団員が総出で一軒一軒、避難を呼び掛けて回った。

■   ■

 内閣府は今年4月、「避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドライン」を改定。四万十町が今回の豪雨に襲われたのは、国の指針に従って、マニュアルの策定作業を進めているさなかのことだった。

 今回の町中の浸水被害は199棟。中尾町長は「予想を超える大雨が降り、県や気象庁の情報だけでは判断が難しかった。勧告などを出すか否かの判断には現場の状況把握が何より大事だが、今回は真夜中だった上に風雨が激しく、困難を極めた」と振り返る。

 市町村が発表する避難勧告などの情報は、住民が身を守る重要な判断材料だ。70人以上が犠牲になった広島市の土砂災害では、発表の遅れが指摘されている。

 台風だけでなく局地的な豪雨も相次ぐ中、より重みを増している市町村の「判断力」。高知県に大きな被害をもたらした8月の連続台風から約1カ月が経過し、その時の教訓も生かしつつ、マニュアル作りが進んでいる。 

【写真】災害時、市町村は避難を呼び掛ける情報をどう出し、伝えるか(写真は8月10日未明、大雨で浸水し始めた高知県高岡郡四万十町茂串町)





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