2014高知豪雨
2014年8月10日朝刊

台風11号高知県直撃 避難2100人超す

 強い台風11号は9日午後、勢力を保ったまま北上し、10日未明に高知県を直撃するコースを進んだ。台風12号の影響で記録的な大雨が降っており、高知県内では土砂災害などを警戒して2100人以上が避難。よさこい祭り本番を開くかの判断も開催当日までずれ込んだ。高知県内では9日夜から風雨が強まっており、高知地方気象台は土砂災害や河川の氾濫に最大級の警戒を呼び掛けた。

 高知県災害対策本部によると、四万十市で男性(60)が強風で飛んできた看板に当たって軽傷を負うなど、高知県内では複数のけが人が出ているもよう。

【写真】台風11号が接近し、風雨が一気に強まった(9日午後10時10分ごろ、高知市本町1丁目)

 宿毛市や四万十市などを流れる中筋川は9日午後11時現在、四万十市磯ノ川で、氾濫危険水位(8・37メートル)に迫る8・01メートルに上昇。四万十市は午後11時2分、東中筋、中筋、具同の1698世帯3936人に避難指示を出した。また、中筋川の支流の山田川も水位が上がり、決壊する恐れがあるとして、宿毛市は9日午後10時50分、山奈町山田の702世帯1512人に避難指示を出した。

 台風11号の北上で9日夕方以降、高知県西部から風速25メートル以上の暴風域に入った。高知県内の多くの地域で時間雨量30ミリ以上の激しい雨が降り、安芸郡馬路村の魚梁瀬では56・5ミリ、高岡郡津野町の船戸では53・5ミリの非常に激しい雨に見舞われた。

 台風11号による降り始めの7日正午から9日午後10時までの総雨量は、船戸で644・0ミリ、吾川郡仁淀川町の鳥形山で609・0ミリ、魚梁瀬で543・0ミリ。
 台風の接近に伴い、9日夜に足摺岬で最大瞬間風速38・2メートル、室戸岬で最大瞬間風速35・5メートル、宿毛市で最大瞬間風速32・7メートルの猛烈な風が吹いた。

 高知県災害対策本部などによると、9日午後11時半現在、地滑りの危険性が高まっている長岡郡本山町の中心部、土砂災害による道路の寸断で孤立の恐れがある馬路村の中ノ川地区など、計7市町村で避難指示が出た。

 南国市や土佐郡大川村、台風12号の影響で多くの浸水被害が出た高岡郡日高村など、計14市町村が全域に避難勧告を発表した。避難した人がいるのは計31市町村。

 11日午前0時までの24時間雨量の予想は、高知県東部の多い所で400ミリ、中部と西部で300ミリ。10日昼にかけて最大瞬間風速が45メートル、波高も11日午前中まで8〜12メートルの高さが予想されている。

 台風は9日午後11時現在、足摺岬の南約30キロの海上を時速約15キロで北北東へ進んだ。中心気圧965ヘクトパスカル、中心付近の最大風速35メートル、最大瞬間風速50メートル。中心の南東170キロ以内と北西130キロ以内が風速25メートル以上の暴風域。

 高知県内で9日午後11時すぎの時点で、避難指示と全域の避難勧告が出ている市町村は次の通り。

 【避難指示】
▽高知市=土佐山菖蒲、鏡的渕
▽馬路村=中ノ川
▽安芸市=穴内
▽本山町=一区
▽大豊町=大平、怒田、東寺内、西寺内
▽四万十市=東中筋、中筋、具同
▽宿毛市=山奈町山田

 【全域の避難勧告】
 南国市▽香南市▽香美市▽四万十市▽本山町▽大豊町▽土佐町▽大川村▽仁淀川町▽佐川町▽梼原町▽日高村▽津野町▽黒潮町

 

「帰るまで家が無事で」県内の避難住民が不安な夜

 迫る台風、募る不安――。高知県沖の南海上を台風11号が9日、ゆっくりと北上した。台風12号などによる記録的な豪雨から、まだ1週間。「今回はどれだけ降るのか」「被害が出なければ…」。山あいの人は土砂災害を警戒し、川沿いの人は氾濫に備え、早め早めに避難所に身を寄せた。日付をまたいで強まる風雨に、誰もが不安な一夜を明かした。

 高知県長岡郡本山町では9日午後4時、中心部の本山地区で土砂災害の恐れが強まり、31世帯に避難指示が出された。これを受け、本山地区のプラチナセンターと中央公民館に約50人が避難。「これほど大規模な避難は記憶にない」(本山町幹部)といい、町職員らが食事の買い出しや毛布の準備に追われた。

【写真】土砂災害の恐れが強まり、約45人が避難した本山町のプラチナセンター(9日午後6時40分ごろ、本山町本山)

 プラチナセンターのテレビで心配そうに台風情報を見ていた石川正美さん(63)は「自宅近くの水路から土砂混じりの黒い水がどんどんあふれてきて…。指示が出る前にここへ来た」と疲れた表情。手提げかばん一つで避難した森下京子さん(76)は「迎えに来た消防団に車に乗せてもらって…。眠れるか心配です」と話した。

 3日からの豪雨であちこちの道路が土砂に埋まり、今も県道高知本山線が通行止めになっている高知市の土佐山地域。公民館には「また車が通れなくなるかも」などと40人が自主避難した。

 40代の女性は、一家3人で「3日午前からもう5日目」。5日に自宅に戻り、家の外壁まで押し寄せた土砂を撤去していたら、この台風。8日から再び避難した。「何事もなく過ぎてほしい。帰るまで家が無事でありますように」と不安そうな表情を浮かべた。

 9日夕、町全域に避難勧告を出した高岡郡津野町。避難場所として開放した西庁舎=力石地区=には2〜95歳の85人が身を寄せた。
 近くに住む又川芳雄さん(82)、静枝さん(83)夫婦は「家のすぐそばに山が迫っていて土砂崩れが怖い。家で心配しているよりも早めに避難した方がいいと考えた」。畳の上で、支給された毛布にくるまった。

 高知県内ではこのほか、激しい雨が断続的に降った宿毛市平田町戸内と押ノ川の国道56号と、四万十市岩田の国道441号が冠水。安芸市穴内甲の海岸線を通る自転車道では、波による浸食で路面が幅2メートル、長さ最大20メートルにわたって陥没し、付近の6世帯に避難指示が出た。

 高知市と大豊町も災害救助法適用

高知県は9日、台風11号の大きな被害の恐れがあるとして、高知市と長岡郡大豊町に災害救助法の適用を決めた。避難所の設置や食料品の供給などに、国や県の支援が受けられる。適用は9日から。

 高知県によると、高知市の鏡的渕地区や大豊町の大平(おおだいら)、寺内地区などで見つかった地滑りの兆候に対し、2市町で計46世帯92人(いずれも9日午後5時現在)が避難している。

 11号の接近で危険性が高まり、避難生活が長期化する恐れがあるとして適用する。

空路や鉄道など乱れきょうも影響残る

 台風11号による公共交通機関の乱れは9日午後も続き、10日にも影響を残す見込み。高知龍馬空港発の便のうち、日本航空は東京行き、全日空は東京、大阪行きのそれぞれ始発便の欠航を決めた。

 JR四国は10日も始発から全線で運行を見合わせる。土佐くろしお鉄道は未定。土佐電鉄の路面電車、土電と県交通の路線バスなどは9日夕方から全て止まり、高知発着の高速バスも一部が運休した。

 高知自動車道の須崎東インターチェンジ(IC)―四万十町中央IC間の上下線は、大雨で9日午後9時から通行止めになった。国道55号は越波により室戸市吉良川町で9日午後5時からストップ。大雨で通れなくなった国道33号は、愛媛県久万高原町柳井川―高岡郡越知町横倉間まで通行止め区間が延びた。国道56号は四万十市右山―宿毛市平田が停電や倒木の影響で午後8時ごろから通行止め。

 四国電力によると、高知市、土佐市、須崎市、宿毛市などで9日午後11時までに約1万2千戸が停電したものの順次復旧。県立の文化施設のうち美術館や文学館などは、10日朝の天候を見極めながら開館時間を決める。



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