2014高知豪雨
2014年8月8日朝刊

大豊町は全国有数の地滑り発地帯 対策費「年10億円」

 記録的な今回の豪雨で地盤のずれや道路の亀裂が相次いで見つかっている高知県長岡郡大豊町は、その地質や気候から「全国有数の地滑り地帯」とされる。台風や地震のたびに土砂災害に悩まされてきた大豊町は、国などの支援で砂防ダムなどのハード整備を進めてきた。「大豊町史」(1987年出版)などをひもとけば、地滑りとの長年にわたる闘いの歴史が浮かぶ。

  大豊町の地質は、四国の中央を横断する二つの構造線に挟まれており、多くの破砕帯(細かく砕かれた岩石でできた軟弱な断層)を含む。平たん地はほとんどなく、急斜面に多くの集落が点在。年平均降水量は3千ミリ近くに達する。

 こうした環境から、地滑りの苦難は大豊町の歴史と切り離せない関係にあった。古くは幕末の1854年、「安政の南海地震」により大豊町東部の怒田(ぬた)、八畝(ようね)地区で地滑りが起き、南大王川に土砂が流出した、との記録がある。

 近代では、戦後間もない1945年9月、さらに54年9月にそれぞれ台風の影響により大豊町内各所で地滑りが発生。54年の災害では合併前の旧東豊永村で208カ所、36ヘクタールもの崩壊があったという。

 【写真】地滑りの危険性が高まっている高知県長岡郡大豊町の大平地区。手前を流れるのは吉野川支流の南小川(7日午後1時半ごろ、無線操縦ヘリコプターで撮影)

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 地滑り対策を宿命づけられた大豊町行政。そこに政治も加わっていく。

 旧大豊村の初代村長、三谷泉水氏(故人)は57年に「全国地滑り市町村協議会」の副会長に就任。国に地滑り防止法の制定を熱心に働き掛けた。

 さらに70年には、徳島県の東祖谷山村と合同で「吉野川直轄砂防事業促進期成同盟会」を設置。高知県選出の衆院議員で当時、建設省(現国土交通省)の政務次官だった田村良平氏(故人)の力添えもあって、建設省直轄の砂防事業が始まった。

 大豊町史によると、85年度までに町内二つの流域の直轄工事に累計57億円余りを投入。これとは別に82年から始まった怒田・八畝地区の直轄事業は現在も続いており、2011年度までにざっと150億円が投じられた。00年には四国最大規模の砂防ダムが完成している。

 このほかにも、旧高知営林局が58年から87年度までの直轄治山事業で計111億円余りを投じた。農林水産省も99年度から12年度までに総事業費95億円(高知県が3分の1負担)で、地下水を抜く大型の排水トンネルなどを整備している。

 大豊町史は、町に投入された対策事業を「年間10億円」とし、「工事が進展し、地域や下流域に安心感を与えることが直接目的ではあるが、過疎の山村に就労の場を与え、現金収入の道を開いていることも忘れてはならない」と記す。

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 7日、大豊町では新たな避難指示も出た。地滑りの兆候が続く大平(おおだいら)地区が見渡せる場所で、建設関連の仕事で対策事業に携わってきたという男性(67)は、こう言った。

 「大きな工事で安全になった地域もあるが、小規模の工事では効果が少なく、次から次へと地滑りが起きてきた。終わりのない作業よ」。大豊町の高齢化率が50%を超える中、「昔ほど対策を強く求める声がなくなった」とも話した。

 今回の豪雨では、国交省が大豊町豊永に設置した雨量観測所で連続雨量1057ミリと過去26年間で過去最高を記録。台風11号も迫る。地滑り対策で苦悩してきた大豊町の試練が続く。

大豊町地滑り広がる 新たに2世帯避難指示

 大豊町は7日、新たに地滑りの兆候が見つかったとして、大豊町東部の怒田地区の2世帯4人に避難指示を出した。川戸や穴内など大豊町内4地区で地盤の変動があることも分かり、国や大豊町が監視を続けるなど警戒を強めている。

 怒田地区では5日午前、山肌で幅45メートル、高さ50メートルにわたって土砂崩れが発生。怒田地区で地滑り対策を行っている国土交通省四国山地砂防事務所が6日に現地を調査し、幅100メートル、高さ90メートルの範囲で地滑りが起きる恐れがあると分かった。

 また、7日に四国地質調査業協会高知支部などの調査班23人が大豊町内を調査した結果、川戸、穴内、西梶ケ内、八川の4地区5カ所で地盤が変動していた。

 特に川戸地区では、町道約300メートルの区間で3カ所の崩落を発見。調査メンバーは「正確な状況の把握へボーリング調査が必要」としている。4地区のうち8世帯12人が集会所などに自主避難している。

 国交省土佐国道事務所は7日、高知県庁で記者会見し、大豊町寺内の国道32号で見つかった亀裂が6日に2ミリほど広がっていたと報告。「直ちに国道に危険が生じる可能性は低いが、台風11号を考えると予断を許さない」とし、通行止めと経過観察を続ける方針だという。

 一方、地滑りの懸念から高知県が通行止めにしていた大豊町大平地区の国道439号・粟生―大滝間は7日午前11時半、すぐに影響は出ないとの判断から規制を解除した。

 JR四国によると、大豊町内の土讃線・大杉―土佐穴内間で6日午後、職員が土砂の崩落を発見。高さ2メートルほど線路が埋まっていたという。8日も引き続き大歩危―土佐山田間の運転を見合わせ、阿波池田―高知間でバス運行を実施する。

 【写真】国土交通省が整備した四国最大規模の砂防ダム(2000年11月、高知県長岡郡大豊町南大王)



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