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特定秘密保護法案 インタビュー

13年12月21日付・朝刊

N自民党衆院議員・中谷元氏


 冒頭、報道批判から始まった…

 特定秘密保護法が参院本会議で可決・成立してから、2週間になる。法曹界や言論界、学者らの専門家のみならず、多くの市民の反対を押し切った側に、自民党衆院議員の中谷元氏(高知2区、元防衛庁長官)はいた。強い懸念が払しょくされないまま、公布された同法。衆院国家安全保障特別委員会で与党筆頭理事を務める中谷氏は、法成立後の今、あまたの疑問や懸念にどう答えるのか。

 高知新聞は中谷氏にインタビューを申し込み、14日午後、高知新聞社で行った。

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 冒頭、中谷氏は「秘密保護法案に関する高知新聞の報道はフェアでしょうか」などとして、自身の所見をまとめた約2千字のペーパーを取り出し、読み上げた。

 「報道とはニュースを取材し、記事を作成して広く公表・伝達する行為であって、報道の自由や知る権利に支えられている反面、客観報道の原則を守らねばなりません。県民には、なぜ秘密法案が必要か知る権利があります。本当に秘密保護法は、天下の悪法でしょうか。高知新聞は、国家にとって秘密保持が必要かどうか、必要と言うなら、秘密が漏れないようにするにはどうしたらいいか、それをはっきり報道すべきです。なぜ、この法案が必要なのか、その面の報道がないのでしょうか」

 「『法案が通ったら戦前に戻る』『自由が失われる』という解説を書いていました。本当にそうでしょうか。反対するために誇張、偏った見方をした弁護士や反対者の声、解説ばかりを載せるではなく、きちんと取材をして事実を報道することが報道の原則です。今回の報道は『真実を伝える』ことになったのでしょうか。最初に反対ありき。法案はけしからん、廃案に持っていけ。反対の集会ばかり。異常なまでの反対キャンペーンで読者を誘導したという意識はありますか」

 高知新聞の山岡正史社会部長はこう応じた。

 「ご指摘は拝聴しました。一つだけ言っておきますと、中谷さんもご承知のように、高知新聞は(法案が衆院通過後の11月27日朝刊1面で)編集局長の特別評論『国民主権脅かす法』を出し、(法成立を報じる7日朝刊では)社説を1面に載せました。この法に対して私たちが疑問や懸念を持っているのは確かです。私たちの考え方に基づいて、きちんと紙面で伝えていきたいと。そういう姿勢でやってきました。それがどうなのかは、読者の判断に委ねたいと思います」

 この後、インタビューは数分間の休憩を挟み、約4時間半にわたって続いた。

 (詳報の採録に際しては、話の順序や言葉遣いなどに関し、読みやすいように編集を施しています)


一般人は対象か 「処罰 最後は司法判断」

 ―秘密保護法について、政府与党は「一般の人は処罰されない」と言っています。根拠はどこにありますか。

 「罰則規定が限定されています。一般市民やマスコミの取材は、スパイ活動とかの目的じゃなかったら、罰せられません」

 ―24条(右に条文)は特定秘密を取得しようとする行為を罰する条文です。その中に「自己の不正の利益」だったら罰する、とある。これはどういう意味ですか。例えば原発反対を訴える市民も、時の政府から見たら「正しくない」となりかねません。

 「(自己の不正の利益とは)良くない利益ですよ、不正の。(修正協議の中で日本維新の会から)スパイ行為は手段(の是非)を別にして全部処罰せよときた。それは恐ろしい話になるんで、目的を限定すればいい、と」

 ―公務員などが特定秘密を漏えいした時の罰則規定は23条です。23条の関連で、一般人が共犯認定されることはあり得ますね?

 「スパイ活動やテロ活動を目的にしていないと、ダメ(犯罪とされない)ですよ」

 ―いや、目的を定めたのは24条だけで、23条はスパイ活動など行為の目的を定めていない。教唆、煽動、共謀も罰するとした25条は23条にも及びます。ですから、特定秘密を管理する公務員らに対し、一般人が「情報を教えて」と迫った場合は、教唆で犯罪になりかねません。

 「(特定秘密の管理者は)法律を守らなきゃ、という建前で管理してるわけ。(一般人が)それを知りながら犯罪を実行させる目的を持って、その人をしきりに誘ったり、勧めたりすることは罰せられます」

 ―教唆は一般人でも該当すると?

 「そうそう」

 ―情報を漏らせ、漏らせと言ったら、犯罪ということですよね?

 「そうですね」

 ―公務員が「漏らせと誘われたけど、俺は応じない」という場合も、漏らせと言った方が処罰されると?

 「(公務員が)漏らさなかったら犯罪にならないわけですよ」

 ―いや、未遂も罰する、と定めています。

 「けど(誘う方は)目的を持ってるわけですよ。スパイ的な」

 ―24条と違って、23条は目的も方法も限定されてないんですよ。

 「一般の人はそれが特定秘密かどうか知らないんですよ」

 ―だから処罰されないという説明だと思いますが、そこに危ういところがあって。内閣官房が作成した逐条解説によると、「(ある情報が特定秘密であると)知る必要はない」とあります。漠然と、何らかの秘密じゃないのかなと思った程度で、その人は特定秘密だと知っている、と解釈されます。

 「そういう行為(教唆)は犯罪を実行する決意を生じさせるに足りるかどうか(によって処罰対象か否かが決まる)ですよね」

 ―でも、内閣官房の解説では、特定秘密の管理者が漏えいを決意しなくてもいい、と。

 「決意しなくても? けど、決意しなきゃ犯罪にならないよ」

 ―逐条解説には目を通されましたか。日付は2012年です。

 「もう去年、こんなのできてたの?」

 ―そうです。

 「オープンになってんの?」

 ―今年12月5日、オープンにされてます。成立の前日です。

 「なんで去年、(逐条解説が)できているんでしょうね」

 ―準備していたんでしょうね。話を戻します。教唆については犯罪を決意しなくても、唆した側は教唆に「なる」と逐条解説には書いてあります。

 「独立教唆というのは『犯罪を実行させる目的をもって人に対してその行為を実行する決意を生じさせるに足りる慫慂(しょうよう)行為をすること』を言います。単に『特定秘密を教えてほしい』だけでは、犯罪行為を実行する決意を生じさせるに足りるものとは言えない、ということです」

 ―それ(中谷氏が読み上げたA4判のペーパー)は、国会答弁ですか?

 「(独立教唆に関する官僚作成の答弁用紙を見せて)これが政府の答え。キーワードは慫慂行為。定義は『そうするように誘って、しきりに勧めること』。広辞苑ですけど」

 ―政府答弁には「しきりに」という言葉はありません。

 「うん」

 ―それも含めて、散々言われている話ですが、この法はいろんな部分で解釈の範囲が広い。曖昧な部分が残されたままです。

 「最終的には司法の判断によりますね」

 ―刑事罰ですから司法判断ということは、逮捕され、起訴され、といった刑事手続きに一般市民が入ってしまう。その可能性があると? 逮捕されなければ(目的がスパイ行為かどうかなど)分からない、その最終判断は裁判で、と?

 「はい」


適性評価は誰が? 「民間人 警察に照会も」

 ―この法の下では、特定秘密を扱う人を決める際、事前に適性評価(右に条文)を行うことになっています。特定秘密は防衛関連産業など民間事業者も扱う。民間事業者に対する適性評価は誰がやるのでしょうか。例えば、外務省の取引先なら外務省の職員が民間人を調査するのでしょうか。

 「その企業が指定するんじゃないかな。まず、本人の同意を前提で資料を出してもらいますよね。それに基づき調査します」

 ―法の規定では、行政機関の長が適性評価をするとなってます。でも現実、大臣らが一人一人を調査できませんよね? 誰が現場で調査や評価をするんでしょう?

 「行政の中の人でしょうね。行政機関の長の責任において、担当職員がやる」

 ―外務省職員が、民間人の借金の有無を調べる? 飲酒状況も外務省職員が調べる?

 「調べるんでしょうね。(特定秘密を)漏らされたら困りますからね」

 ―適性評価を担当する現場の実務者は誰なのか。筆頭理事としてやって来られた中で、そういう議論は全くされていないのですか。

 「省の責任において(調査を)委託するわけですから、その省が責任を持って調べるということです」

 ―外務省が警察庁長官や県警本部長に依頼して調べるというようなことは、議論されてないんでしょうか。

 「関係機関に照会することになっています(12条4)」

 ―関係機関は警察組織も含んでいるんでしょうか?

 「そうです。警察署みたいな出先にね。条文に書いてますよね。公務所に問い合わせができる、と。それは当然だと思います。(特定秘密を)漏らすような人には仕事を頼めませんからね」

 ―民間人の適性評価を、現実には警察の情報に基づいてやる場合もあると?

 「警察に照会することもある。必要な範囲で。本人の同意を前提に」

 ―本人の同意について内閣官房作成の逐条解説には、こう書かれています。「評価対象者が把握されることを想定していないプライバシーに深くかかわる個人情報についても、実施権者が取得する必要がある制度である」と。こんなことまで調べられるとは思わなかった、という部分まで調べられる可能性が否定できません。

 「それは必要上、調べるでしょう。調べないと、(特定秘密の扱いを)任せられない」

 ―12条に列挙してある調査事項の7項目を超えて、調べる必要があると?

 「まあ、7項目を聞くわけですよ。それに対して必要な範囲で調査はします」

 ―12条には「評価対象者の知人その他の関係者に質問」と明記されています。本人同意があっても、その人と交友関係にある人は、同意なく調査されるわけですね。

 「そうですね」

 ―全く自分の知らないところで、同意したこともないのに、一市民が調査対象になりますね?

 「まず、質問はします。行政職員が。警察が調べるかどうか知りませんけど」

 ―適性評価の対象者としてAさんを調べるとしましょう。Aさんに親しい友人がいる。その友人が何かの団体に属していたとして、そういうことも調べられることがあるわけですね?

 「かつて防衛庁の委託した中に特定団体の人が含まれていた事件がありました。(特定秘密の扱いを民間に)お願いする以上はそういう要素がないようにすると思いますけど。私もいろんな友だちがいます。(適性評価は)総合的に、この人は大丈夫かどうか判断するんでしょう。大事な仕事を託すわけですから」

 ―つまり、第三者がいつの間にか属性などを調べられる。それで言えば、思想信条の自由を保障し、それらによる差別を禁じた憲法よりも、法律の運用が上位に来る危険性はありませんか。

 「けど、車の運転と同じように、ある程度の技能とかがないと、危なっかしくて運転させられませんよね」

 ―思想信条で運転させない、という考え方は聞いたことがありません。

 「能力です。資質。それを見分けないと(特定秘密が)漏れてしまいますから」


メモ

 ◆「特別秘密の保護に関する法律案」の逐条解説

 秘密保護法制定のため、内閣官房が作成した条文ごとの解説。全国市民オンブズマン連絡会議によると、2012年4月に解説案が作られ、同年11月に完成した。その存在を知った弁護士らが情報開示請求したが、目次すら黒塗りだった。

 非開示について、北村滋・内閣情報官は「国民の間に未成熟な情報に基づく混乱を不当に生じさせ、率直な意見交換、意思決定の中立性が損なわれる恐れがある」と説明。公開すれば、「法案化作業や内閣情報調査室の事務に支障を及ぼす」とした。

 逐条解説は結局、秘密保護法成立の前日の12月5日、福島瑞穂参院議員の要求でようやく開示された。「特別秘密(現在の呼び名は『特定秘密』)」「テロリズム」「教唆」などの用語の定義、処罰対象者、対象行為などの定義や例が詳細に説明されている。

 ◆独立教唆

 犯罪行為をするよう、他人を誘うこと。実行を決意するに足りる行為であれば、実際に犯罪行為を実行したことを必要とせず、実行する決意を抱かなくても成立する。刑法61条は独立教唆を認めておらず、被教唆者が犯罪を決意・実行した場合のみ、処罰対象となる。

 これに対し、特定秘密保護法の逐条解説によれば、同法が規定する「教唆」は、日米相互防衛援助協定等(MDA)に伴う秘密保護法などが規定する「教唆」と同様、独立教唆のこと、と定義した。

 逐条解説は、独立教唆について以下のように説明している。すなわち、人に漏えい行為等を実行する決意を生じさせるに適した行為があれば、それだけで独立犯として成立。被教唆者による漏えい等の実行を要しないだけでなく、実行する決意を抱くに至ったことも要しない。

【写真】特定秘密保護法案に反対し、国会前で抗議する人たち(6日)


 
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