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特定秘密保護法案 インタビュー

13年12月4日付・朝刊

K五島正規・元衆院議員

「官僚の巻き返しだ」と話す五島正規氏(高知市内)

 「国家主権」危惧する

 永田町から身を引いて8年。元衆院議員の五島正規氏(74)=民主党高知県連顧問=は11月14日、特定秘密保護法案に対して大学教授ら高知県内有識者と共に反対声明を発表した。「安倍内閣の政策はまるで現行憲法が停止しているかのよう。自民党改憲草案が書く『国家主権』に変わったと考えているのではないか」と批判。国会審議の現状も「法案審議にすらなっていない」と危惧する。

 憲法の停止とは―。例を求めると、五島氏は臨時国会で審議されている生活保護法改正案など一連の生活保護の見直しを挙げた。

 「(8月から段階的に引き下げられている)生活保護費の削減。申請時に3親等までの資産、場合によっては3親等の雇用主まで調査する。これは嫌がらせでしかない。憲法25条でいう人間が生活する上でどういう制度が必要かという話を抜きにしている。そこには『人』がありません」

 「安倍(晋三首相)さんは憲法改正をしなくても、その目標さえ達成できればいいと考えているのかもしれない。特定秘密保護法案も社会保障もそう。自民党憲法草案の国家主権に持っていきたいのでしょう」

 法案が掲げる特定秘密の対象は@防衛A外交B特定有害活動の防止Cテロリズムの防止―の4分野。

 「最初の二つは既に国家公務員法や自衛隊法などで縛られている。量刑が軽いというなら改正でいい。特定有害活動というスパイ活動、テロは放っておけということではない。だが『その他』という範囲が特定されない曖昧な表現で、際限なく調査活動が広がるような項目になっています」

 「村木厚子さん(厚生労働省の文書偽造の冤罪=えんざい=事件)じゃないが、検察や司法行政の人権侵害や、でたらめまでもが隠される。『その他』に含まれる可能性が大きい。石破(茂・自民党幹事長)さんが言う『デモで大きな声を出したらテロ行為』となれば、テロ防止の『その他』で際限なく調査は拡大でき、予算がいくらでも使われます」

 法案提出の背景には、小泉政権から民主党政権にかけて、官僚の無駄遣いや検察、厚労省などの失策で利権が危うくなってきた官僚組織の巻き返しがある、とみる。

 「官僚は自分たちの権限が危うくなったという恐怖心に襲われ、安倍内閣の成立を奇貨として完全に内閣を押さえた。各省の最も切れ者を秘書官に入れている。完全に官僚内閣です」

 「互いの省庁の権限を縄張りとして認め合い、外務省に国家安全保障会議(日本版NSC)を譲ったから、公安や内閣調査室がこれはうちがもらう、と。国民主権を犠牲に官僚の縄張り争いをやろうとしているのが特定秘密保護法案ですよ」

 1990年から15年、籍を置いた永田町。同法案に向き合う国会審議、与野党の姿勢をどう見ているか。

 「国会審議の中で(秘密の範囲などが)全く明らかになっていない。パブリックコメントは8割近くが反対で、地方公聴会も全員が反対。国民の合意を得るため、それにどう配慮するかという審議は1時間もない。一連の手続きが反映されるどころか、『聞き置く』にもなっていない。もう問答無用です」

 「世代が変わった。自民党内がここまで単細胞的にイケイケドンドンで収まることはなかった。もう少し、国の進むべき方向についてバランスある考え方をしていたと思います」

 「憲法改正。原発問題。今回の法案。格差の解消。かつての自民党なら何らかの妥協点を設けながら、何とかしようとしました。今の自民党にはそれが全然ない。野党もその四つをまともに政策として掲げている政党は少ない。世論とここまで全ての政党が乖離(かいり)している政治とはどうなんだと思う」

【写真】「官僚の巻き返しだ」と話す五島正規氏(高知市内)


 
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