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特定秘密保護法案 インタビュー

13年11月22日付・朝刊

E山下正寿・太平洋核被災支援センター事務局長

「政府にとって、国民の命は二の次」と語る山下正寿氏(宿毛市)

 国民の命、安全は二の次

 太平洋核被災支援センター事務局長の山下正寿氏(68)=高知県宿毛市=は、米国によるビキニ核実験の被害を追い続けている。核実験は1946〜58年、マーシャル諸島のビキニ環礁などで計67回行われ、多くの高知県籍漁船も被ばくした。その全ぼうは現在も明らかになっていない。健康被害に悩む乗組員とその家族の話に耳を傾けて約30年。そうした経験から「国民に必要な情報は隠されている。政府にとって、国民の生命や安全は二の次」と言う。特定秘密保護法が成立すれば、その傾向にさらに拍車が掛かるのではないか、と危機感を募らせる。

 「ビキニ事件は、戦後の日本で一番大きな秘密情報でしょう。放射線量が高い魚を廃棄した漁船は、全国で延べ約千隻。1万人近い関係者がいるにもかかわらず、54年に最初の被ばくが分かったマグロ漁船『第五福竜丸』1隻の問題に矮小(わいしょう)化されました。当時、核実験は大きな国際問題だったのに、日米の政治的決着で強引な幕引きが図られました。日本は米国との関係を強化したかったし、米国は核技術を向上させるために実験を続けたかった。外交上の利益が一致し、双方が秘密にしたい場合、国民が知るべき情報は隠す。そういうことが実際に起こったのです。乗組員の健康は二の次でした」

 山下氏は仲間と共に調査を続け、多くの高知県籍漁船が米国の核実験で被ばくしていたことを突き止めた。調査は今も続き、何度も「国の秘密」にぶつかっている。一方、米国側の公文書は次々と公にされてきた。ビキニ事件後、米国が日本国内の反核運動を抑えるため、「原子力の平和利用」に日本を参画させる方針を打ち出していたことも米国側資料で明らかになった。

 「米国からは資料が出てくるのに、日本では政府に何度問い合わせても『解決済み』と言われ、文書が出てこない。しかも、出てくる書類はほとんどが黒塗りです。乗組員の健康被害は60年がたった今も知ることができない。秘密は国民の命を犠牲にします」

 東京電力福島第1原発事故の後、山下氏は福島の被害も調査するようになった。

 「この法が成立したら、福島の情報も隠されるでしょう。事故原因も『テロ対策』という名目で表に出なくなる。大切な情報が勝手に特定秘密に指定され、『分かりません』で済まされてしまう。国の秘密主義はさらに強化されます。目に見えない放射線は簡単にごまかせます。しかも、実際の被害が出るのは何十年も後のことです。その時には責任の所在が分からないんです。一番の被害者は、子どもたちです」

 「政権が自らに都合の悪い情報を隠せば、自らが非難される状況を事前に防ぐことができる。政権を安定させるためには、どの政治家もやりたがることです。しかし、それがまかり通っていいのでしょうか。法が成立すれば、調査を続ける私も逮捕されるかもしれません」

【写真】「政府にとって、国民の命は二の次」と語る山下正寿氏(宿毛市)


 
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