急旋回、何度もレバー操作 胴体着陸事故機の機長ら証言

激しく火花を散らしながら、高知空港に胴体着陸するボンバルディア機(昨年3月13日午前10時54分)  時速三百キロで急旋回、繰り返すレバー操作―。二十八日公表された全日空ボンバルディア機胴体着陸事故の最終報告書に盛り込まれた今里仁機長らの証言から緊迫の機内を振り返った。

 二〇〇七年三月十三日午前八時四十七分、高知空港の管制官から着陸許可を受け、1603便は着陸体勢に入り高度約四百六十メートルで、車輪を下ろす「ギアレバー」を操作。主脚は出たが、前輪の状態を示すランプが赤く点灯した。

 「前輪が出ない」。操縦室床にある手動で車輪を出す非常用のハンドルを副操縦士が引いたがランプは赤のまま。午前九時二十一分と同三十五分の二回、地上の整備士に前輪の状態を確認してもらうため、滑走路の上空約九十メートルを低空飛行すると、地上からは「脚ドア(前輪格納扉)が開いていない」。

 前輪を出すための努力は続く。翼を五〇度傾け、三百キロを超える速度で急旋回。滑走路に接地し、すぐに上昇する「タッチ・アンド・ゴー」。遠心力や接地の衝撃を与えても効果はない。ギアレバーの操作は十回以上試みた。

DHC8-Q400の飛行経路 この間約一時間半。燃料は残り約四百五十キログラムを切る。今里機長は胴体着陸を決断した。過去の訓練で車輪が出ないことを想定したシナリオを自ら作った今里機長。その時のことが頭をかすめた。「機体前部に重みがかからないよう、乗客に後方の席へ移動してもらおう」。経験が冷静な判断を生んだ。

 この間、客室では上空待機や急旋回などの度、きめ細かく機内放送があり、乗客は落ち着きを保っていた。翼付近の乗客も求めに応じ速やかに後方席に移動。「乗客が冷静に協力してくれ、助けられた」と客室乗務員。

 滑走路上はほぼ無風。「普段の接地点より手前に降り、ぎりぎりまで機首を浮かせる」。手順を決め滑走路へ。「着陸二分前」「着陸三十秒前。衝撃防止姿勢を取れ」。機長のアナウンスの後、客室乗務員が大声で繰り返す。

 午前十時五十四分、時速約二百キロで主脚が接地、操縦かんを引いて機体をできるだけ水平に保ち、十二秒後、速度が落ち、ゆっくりと機首が路面へ。火花が飛ぶ。さらに二十二秒後、機体は滑走路中心を外れることなく、前のめりに静かに停止。客室では誰からともなく拍手が起きた。

 【写真】激しく火花を散らしながら、高知空港に胴体着陸するボンバルディア機(昨年3月13日午前10時54分)


(08年05月28日付・夕刊)

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