07年3月13日付・夕刊

 機長ら説明、混乱起きず ボンバルディア機胴体着陸

胴体着陸したボンバルディア機から降りる乗客ら(13日午前11時10分ごろ、高知空港)

 前のめりになった機体の下から真っ赤な炎がぼっと出た。火よ止まれ、機体よ止まれ。見守る人々が祈りながら手に汗握る。午前10時54分、高知空港。消防車やパトカーのサイレンが響き渡る中、ボンバルディア機が高知空港に接地した。「やった。成功だ」。ほっとした空気が一帯を包む。しかし…。県民の心には割り切れなさも残った。「いつかはこんな事故が起こると心配していたのに…」

 「機長から『胴体着陸する』と聞いて、ひょっとしたら炎上して、ばらばらになるかもしれないと思った」――。全日空機に乗り合わせた乗客は高知上空を何度も旋回する機体の中で大きな不安を感じながらも、機長らの落ち着いた対応と説明で大きな混乱は起きなかったという。

 最前列に座っていた兵庫県芦屋市の中内一志さん(47)は「(高知市の)桂浜が見えてから4、5回旋回した後、一度降りたのに、また上昇したのでどうしたのかと思った」。大阪府の会社員、蔵所佳範さん(34)は「『前輪が下りない』というアナウンスを聞いたときが一番怖かった」と恐怖を語った。

 機長や客室乗務員の落ち着いたアナウンスは数回にわたって続き、大阪市の男性会社員(36)は「着陸5分前に、前の座席に手をついて、頭をかがめて、衝撃に備えるよう説明があった。『ネクタイをしている人はネクタイを緩めてくれ』という説明もあった」。

 大阪府の男性会社員(51)は「『あと10分くらいで着陸しないと燃料が切れる』というアナウンスがあった」と着陸前の様子を語り、他の乗客は「機長から『(常に)訓練しているので心配しないでください』と落ち着いた声でアナウンスがあった」。

 大阪府の旅行会社員、暮部修司さん(33)は「着陸時は最初は普通だったが、機首が地面についた時はがくんと衝撃があって前のめりになった。何度も飛行機に乗っているが、こんなことは初めてで怖かった」

 出張で搭乗したという大阪府交野市の末広清さん(37)は「エンジンの真横の席だったので、火花が見えて驚いたが、着陸の衝撃はなかった。機長が『火災の心配はありません』など落ち着いてアナウンスしていたので心配しなかった」。

 別の男性も「着陸時は、ざーっとすべるような感じ。みんな額に重ねた手を合わせて、前のシートに頭をつけていた。着陸した時、おーっと歓声が上がって自然と拍手が沸き起こった。ほっと一息ついた。すぐ妻に電話した」と話した。

 【写真説明】胴体着陸したボンバルディア機から降りる乗客ら(13日午前11時10分ごろ、高知空港)

 空港騒然固唾のむ

胴体着陸したボンバルディア機から降りる乗客ら(13日午前11時10分ごろ、高知空港)

 「車輪が出ない…」。伊丹空港を離陸後、午前8時55分に到着予定だった同機から車輪が出ないことが分かったのは8時40分ごろ。燃料を減らすため、同機は高知空港上空を約2時間も旋回し続けた。

 高知空港には警察車両が続々集結。空港内外の消防車両も次々と滑走路そばに出て待機した。国交省高知空港事務所は「建物内に入らないで」と報道陣も完全にシャットアウト。職員が険しい顔で堤清空港長の部屋を頻繁に出入りした。

 空港ビル内では関係機関のスタッフが奔走し、滑走路が一望できる空港ビル屋上の展望デッキには警察や空港ビル関係者ら約20人が待機。着陸の様子を固唾(かたず)をのんで見守った。

 10時54分、消防車や救急車十数台が待ち構える中、前輪が出ないまま滑走路に降下した。後輪が地面に着いたまま走り、やがて機体は前のめりに。前部が滑走路に接地する。煙が上がる。火花が飛ぶ。

 「火よ消えてくれ、成功してくれ」。空港2階の出発ロビーでは、ビジネスマンら約100人が滑走路側に詰め寄り、ガラス越しに息を詰めて見守った。

 「もうちょっと、頑張れ、頑張れ」。十数秒後、機体は滑走路上で無事停止。「よかった、よかった!」と、ロビー内に大きな拍手が起きた。

 【写真説明】到着ロビーから出てくる乗客たち。記者の問いかけに安堵の表情(午前11時45分頃、高知空港)

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