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灼 ―よさこい進化論―
<33>
第4部 鳴子の行方
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総研誕生 「このままじゃいかん」

 「いかんのよ、このままじゃあ。危機よ危機!」

 会合を仕切っていた岡崎直温(48)はそう叫んで、こちらをキッと見据えた。昨年十月のある夜、高知市追手筋のビルの一室である。

祭りの改革を話し合う「よさこい総研」のメンバー。右端が幹事の岡崎(高知市大川筋2丁目の旧キャラバンサライ)

 その日、私は発足したばかりの「よさこい総研」の会合に初めて顔を出したのだが、実のところ、議論のテーマである「よさこい改革」の真意がよくのみ込めていなかった。「改革」というからには前提に問題点があるはずだ。それが何か、いまひとつ分からない。だから議論に横から口を挟む格好で、「一体、何が問題なんですか」と質問したのである。

 長机を囲む十数人の男女は、<今さら何を…>といった顔になった。

 「だからあ…。祭りの参加者は減ってるし、ビジョンはない。札幌はあれだけ発展しゆうに、高知は態勢がなってない…」

 岡崎は、胸のもやもやを吐き出すように「祭りの問題点」を語り始めた。

     

 かつて一世を風靡(ふうび)した踊り子チーム「無国籍」の立ち上げスタッフの一人で、現在「競演場連合会」会長。それが、高知市上町でバイク店を経営する岡崎の「よさこいの顔」である。市内九つの地区競演場の総大将として乱舞を支える裏方の一人で、大の祭り好き。店にはよさこい祭りの記事や、法被姿で大きな旗を持つ自身のスナップ写真が張ってある。

 その岡崎たちが「よさこいの将来を考え、行動する」という旗印の下、「よさこい総研」を作ったのは昨年九月のことだ。代表幹事は帯屋町二丁目商店街理事長の岩目一郎(46)で、岡崎と升形商店街理事長の神田尚和(46)は幹事で中心メンバー。会には若い踊り子をはじめ、衣装、音楽、企画など、祭りにかかわるさまざまな立場の約七十人が入っていた。

 「総研」発足を聞いた時から、ある種の関心は持っていた。「よさこいを考える」という触れ込みは、現状の運営に何らかの不満や問題意識を持っていることの表れだろう。祭りの最前線にいる彼らが率直にどんな思いを持っているのか。それを聞いてみたかった。会の成り立ち自体、主催団体である「よさこい祭振興会」とは全く関係がなく、むしろ振興会に対抗するような雰囲気さえあった。

 実際、私はその夜以来、定期的に彼らの会合に参加することになるのだが、「今のままではだめだ」という話はその度ごとに出た。何かが噴き始めている、と思った。

     

 「灼(しゃく)―よさこい進化論―」は、第一部で全国津々浦々に広がる「鳴子文化圏」を探訪。第二部ではその震源となった北海道の「YOSAKOIソーラン」をリポートした。そして第三部は、社会部記者が踊り子として「第四十五回よさこい祭り」に参加。真夏の巨大なステージに集うさまざな人間模様を通し、祭りの魅力を探った。「踊らにゃ、分からん!」。記者はそう言った。

 しかし、踊ってもなお分からないことがある。祭りの運営をどうすべきかという長年の懸案だ。どこの祭りも経験したことのないような急激な拡大と進化を遂げつつあるよさこいは、その過程で運営上の「きしみ」も一緒に生んできた。

 「今のままでいい」「いや、変えるべき」。会う人ごとに意見がある。多くの人がかかわり、参加している。ひとくくりにできない巨大さ、深さがある。が、少なくとも祭りを内側から見た時、そこにはいくつかの難題が横たわっている。

 連載第四部は、上がり始めた改革の声と、よさこいの発展を模索する主催団体の姿を追いながら「祭りの行方」を考えたい。

                                   =文中敬称略

                              (社会部・山岡正史)

 【写真】祭りの改革を話し合う「よさこい総研」のメンバー。右端が幹事の岡崎(高知市大川筋2丁目の旧キャラバンサライ)


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