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「よさこい貧乏」という言葉を聞いた。よさこいのチームづくりは、決してもうからない。それどころか祭りにのめり込み、出費がかさむ人もいる。実際、私が会った何人かは異口同音に言ったものだ。
「損するばあやに、やめられん」
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「'98よさこい」が終わり、秋めいた風が吹くようになったころ、高知市内の喫茶店である会社員(35)に会った。作業着姿のこの男性は平成四年、当時経営していた飲食店でチームを立ち上げ、大赤字を出した「貧乏」である。
「踊り子で出た時に感激して、自分のチームを作りたくてねえ。電話かけまくって踊り子百四十六人を集めて、一万五千円の参加費を取った。寄付金もあちこちから募って、三百万円の資金が整った。さあ、やれるぞ。そう思った。でも、甘かった…」
音響機器のリース代や衣装代が予想以上に高くついた。踊り子の弁当を祭り当日に一食分増やしたり、予定外の打ち上げ会も開いてしまった。ずるずる出費がかさみ、約二百五十万円の赤字になった。
「祭りの楽しさにのまれ、いいものをつくりたいとどんどん金をつぎ込んだ。まだ二十代でイケイケでして。結局、自分一人で赤字分をかぶりました」
この男性、翌年も別のチームのプロデュースに携わったが、その後は店をたたみ、よさこいとかかわることもなくなった。
「ことしもよさこい見に行って、思いました。ああ、みんな毎年やりゆうなあ。僕もこの中に入りたいなあって。今でもやりたい、踊らせたい…」
昔話を楽しむように明るく、最後は夢見るような「踊らせたい」だった。
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よさこいの出場経費は、一チームおおむね二百−三百万円はかかる。相場は、地方車に積む音響機器や照明のリース代が五十万−百万円、踊り子の移動用のバスのレンタル料が四十万円前後など。さらに一着五千−二万円前後の衣装代、打ち上げ代、弁当代などが踊り子の数だけ必要になる。
ちなみに私が踊った「ユニティビート」は、踊り子の参加費と個人の協賛金で総予算二百五十万八千円。収支はほぼトントン。ほかの商店街やクラブチームにも聞いたが、若干の赤字か、よくて七十万円ほどの黒字だった。
どのチームも、スタッフらが無料奉仕で奮闘するから、何とか赤字が出ない線までたどりつく。「県立実践農業大学校」のように総予算を百二十万円まで切り詰め、学生と職員らが炎天下で草刈りをして十八万円を稼ぎ、経費の足しにしたチームもあった。
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「私も損ばかり。結局、よさこいへの思い入れが強くて、クライアント(依頼主)が望む以上にいいものをつくってしまってねえ。多い年で自分が二百万円くらいかぶりましたから」
こう話すのは、かつて高知市で地方車づくりを請け負っていた美術制作会社の経営者(41)。多い年で十チーム以上を請け負ったこの男性も、祭りにのめり込んだあまり、一時は「貧乏」になったクチだ。
「三カ月かけてチームつくって利益はたった五十万円。好きでなきゃできん」とは、かつて企業チームをプロデュースしていた企画会社の元社長(41)。今は小さな会社勤めである。
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よさこいは、利益を上げるイベントではない。
九カ所の地区競演場では、延べ千人のボランティアが会場をこしらえ、踊り子を出迎え、水やお茶をサービスする。いろんな人がいろんな形で、金や体力や時間を提供する。踊り子は参加費を出し、その舞台で浮かれてはねる。
「みんなあが消費する。みんなあが吐き出す。それがよさこいじゃ」
ある「貧乏」は、屈託なくそう言う。
(社会部・石井研)
【写真】総予算120万円の「実践農業大学校」。学生と職員60人が手作りで奮闘した(高知市帯屋町1丁目)
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