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灼 ―よさこい進化論―
<27>
第3部 踊らにゃ 分からん
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「振付師」の個性

 「ユニティビート」で踊りの練習を重ねながら、いくつかのチームを見に行く中で、とりわけ興味を感じたのは「振付師」たちである。この人たちが踊りをつくり、踊り子を指導していく。チームの個性をつくっていく人々である。

はじけるような明るさで踊り子に教える大村憲子さん。若者のファンも多い(高知市知寄町3丁目)

 踊り子たちもそれを心得ており、「〇〇先生の振り付けで踊りたい」とチームを選ぶことが多いそうだ。この夏、数人の振付師に会ったが、人気チームの一つ「四国開発グループ」を率いる大村憲子さん(46)もそんな売れっ子の一人。さばけていて、とても楽しかった。

     

 九日の前夜祭の直前。「四国開発」が厳しい練習を続けていると聞いて、練習場所の駐車場を訪れた。百人以上の踊り子を前に、「頑張れ若者ぉー!」。金髪にヘッドマイクをつけ、細い肩をあらわに、ハスキーボイスの大村さんが笑顔いっぱいで教えていた。

 根っからのよさこい好きという印象を受けたが、翌日、高知市知寄町三丁目のレッスン場兼住宅に大村さんを訪ねて話を聞くと、こちらの早合点と分かった。

 「チームづくりって感動するでしょう?」と切り出した。「もちろん」と意気投合して、話が弾む…、と思った…。ところが大村さんは予想に反し、「えっ? 参ったなあ」と口ごもり、うつむいてしまった。簡単には「感動」などと口にしたくなさそうだ。

 「感動もするけど、仕事ですから。ジャズダンス人口を増やすことで、自分のスタジオが潤うっていうたくらみもあるし。そう、生活のかてかな」

 小さな台所でインタビュー。そばの部屋から少年が出てきて、頭を下げ、通り過ぎた。「高二の長男。この子生まれてから、生きなきゃいけなくなって…」

 たばこの煙をフーッ。

     

 大村さんは高知学芸高から東京の大学へ進んだが、一年で中退。アングラ劇団「天象儀館」の女優に。退団後もフリーでしばらく舞台を続けたが、暮らしはすさむ一方。二十九歳で長男が生まれ、三十二歳で帰高した。ジャズダンスを教えて生計を立て、十年前からよさこいの振り付けや指導を始めたという。

 「何で市民こぞって踊るのかって、ずっと不思議でねえ。でもまあ、『市民』になるのもいいもので、ええ、東京ではすさみ切っていたから、よさこいのおかげで生活者に戻れて、更生できたって感じで」

 人柄は底抜けに明るい。でも、ふっと暗く感じさせる独特のムード。そういえば…。前日に見た踊りを思い出した。身をくねらせ、粘りつくような動きが随所にあった。踊り子たちは笑わない。激しく見事な動きの中に、どことなく暗いにおいがする。そこが、魅力になっている。

     

 よさこいの振付師はジャスダンスのインストラクター、日本舞踊のお師匠さんらが中心。踊り子のレッスンや、本番でもチームで踊ることを含めて契約する場合が多い。チームの意向を聞き、数カ月前から音楽に合わせて振り付けをつくる。大村さんの場合、契約金は一カ月約三十万円。

 「かっとうしながらやってますね。本当は理解されたくないアングラなのに、太陽の下で市民の祭りをつくってるわけで。でも、でも中でやってみると実は楽しいし。それに生きなきゃいけないし」

 大村さんはことしも笑顔いっぱいで踊り子をリードした。内なる屈折と、どことなくこっけいなギャップ。ただし、断っておくが振り付けは一級品。「四国開発」は前夜祭が準グランプリ、本番は金賞に輝いた。

 「若かったら、よさこいに出ます?」と聞いてみた。「出ない。人と同じ踊りなんてしない」「いつまでよさこいを?」「それ聞かれると、つらい。もうやめようって、いつも思うけど…」

 不思議な個性が、よさこいをつくっている。

                                (社会部・石井研)

 【写真】はじけるような明るさで踊り子に教える大村憲子さん。若者のファンも多い(高知市知寄町3丁目)


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