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灼 ―よさこい進化論―
<24>
第3部 踊らにゃ 分からん
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ああ、帰ってきた

 「セントラルグループ」のけいこが続いている。私もそろそろ「ユニティビート」の練習に戻らねばならないが、もう一回寄り道をして、セントラルの話を書きたい。祭り好きの陽気な「おんちゃん」の話だ。

練習中にゲキを飛ばす池上さん。本番ではことしも地方車の上から踊り子を先導した(高知市中宝永町)

 「苦しかったらー、笑えー。行けー」

 百五十人の踊り子を束ねる世話役の池上志朗さん(54)。練習場所の高知市中宝永町のパチンコ店屋上に欠かさず来て、いつも竹刀を持っている。踊り子に「おんちゃん」と慕われている。竹刀で床を時々軽くたたいて回るが、「元気出せよ」のパシン、である。

 ダンスインストラクターの国友須賀さん(45)とチームを率いて八年目。若いころはクラブのDJをしたり、バンドでドラムをたたいたり。チームの母体のパチンコ店グループと取引のある屋外広告の会社を経営しており、「遊び、暇つぶしのつもりでよさこいを」と同グループ社長と意気投合。古い遊び仲間でつくる「あほんだら会」でチームを立ち上げた。

 当然、企業宣伝の狙いもあった。しかし「最初はねえ、パチンコ屋のチームなんて、という感じて踊り子は来ざった。社長と二人、飲み屋の便所に手書きのポスター張ったりね。それでも集まらず、家族や知り合いをかき集め、一万円出して踊ってもらった。小汚い衣装の、ひどいチームじゃった」

 ところが本番が始まると、踊り子が見る見る輝き出した。躍動感のある踊り、店名のロゴを入れない衣装も受けた。池上さんはぼろぼろ泣いて、よさこいに引き込まれていく。チームも人気が出た。

 「三十人の一般公募に千人が殺到したこともある。水着審査があるじゃの、世話役に金渡したら入れるじゃのとうわさも飛んだ。国会議員を使うて入ろうとした踊り子もおってね。あれにゃあ、参った…」

     

 よさこいの踊り子数は、実は平成五年の第四十回の一万六千五百人をピークに漸減傾向にある。昨年とことしは共に一万四千人にとどまった。そんな中で、特に新興チームにとっては踊り子の確保が難問の一つ。祭りに参加を申し込んだものの肝心の踊り子が集まらず、結局参加を取りやめるチームが毎年のように出ている。

 セントラルに代表される人気チームは、そんな悩みとは無縁だ。百五十人の踊り子の大半は、国友さんが経営するダンススタジオの生徒と、「あほんだら会」のメンバーらが一人五人ずつ持つコネの枠で決まる。残りの二十−五十人の枠に、毎年二百人前後もの参加希望があるという。

 一般公募は新聞広告で面接日を指定。池上さんらがじかに会って決める。踊りの審査はない。

 「やる気があって、目がえいと思う子に来てもらう。礼儀正しくて、えい子ばっかり。ほんと、そんな子が集まってくるね。うちに来る子は、ほどほどじゃいや、と思っている。練習を乗り越えたい。最高にはじけたい、と」

 セントラルは昨年、社長の身内の不幸で出場を見送った。池上さん自身も、経営する会社が傾いた。つらい一年だった。ことしは新しい会社を興し、二年ぶりの暑い夏になった。

 「ああ、ことしは帰ってきたぞという感じ。よさこいは、わびやさびより躍動感よ。ええねえ、よさこい。踊り子は必ずうもうなっていくし、少年野球チームをつくる感じかなあ。前夜祭は、絶対に勝ちたいね。前夜祭に出る七十人を選ぶの、つらいけどね。あれって宣告じゃき…」

     

 その前夜祭。池上さんの二年ぶりの元気な掛け声に乗って、自慢の踊り子たちはきらめくばかりの舞を繰り広げた。そして七回目のグランプリに選ばれた。ぎっしりの観客が取り囲んだ中央公園のステージを、じんじん、じわーんとしびれさせた。

                                (社会部・石井研)

 【写真】練習中にゲキを飛ばす池上さん。本番ではことしも地方車の上から踊り子を先導した(高知市中宝永町)


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