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私が入れてもらった「ユニティビート」の練習は、夏休みのラジオ体操のように穏やかな雰囲気で、のんびりと始まった。
夏のにおいが濃い午後だった。高知市稲荷町の青柳公園。せみ時雨の中、Tシャツや短パン姿などの十−三十代の男女が、四十人ほど集まっていた。
木陰にいるのは高校生。あっちはカップルかな…と観察していると、「並んでくださーい」とスタッフ。リーダーの健ちゃん=吉岡健児さん(37)が「ことしのー、練習をー、始めまーす」とあいさつ。たったそれだけ。
十人余りのスタッフが、「えー、まだ踊りを覚えていない人もいますが」と口ごもった後、音楽に合わせてことしの振り付けを披露していった。一カ月がかりでつくったという振り付けは正調も織り交ぜ、易しからず難しからず。
ずらり並んだ踊り子たちは、腰を落とすポーズをまねたりしながら、「へー」「ふーん」と言いたげな表情で見守っている。
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よさこい祭りの日程は八月九−十二日。踊り子チームの練習は多くが七月二十日前後に始まる。
しかし近年、振り付けの難度が高まり、観客を意識した「見せる踊り」にこだわるチームの増加で、練習開始は徐々に早まる傾向にある。例えばことし、洗練された踊りで人気をさらった「十人十彩」チームは、まだ踊り子もそろわない七月五日からけいこを始めたという。
「ユニティビート」はこの流れとは逆に、昨年より五日遅い七月二十五日が初練習だった。練習はその後、本番まで毎日続く。時間は約一時間半。忙しい人が選べるように夕方と夜、さらに深夜の部まである。普通は夕方の一回限りが一般的だから、すこぶるつきの親切さではある。
私は深夜の部でないと時間がとれない。午後十時半。しーんとした公園。踊り子たちは、騒音に配慮して音を立てないように黒いゴムを鳴子にかぶせ、インストラクター役の遠山幸さん(31)らの「イチ、ニ…」に合わせ、ゆっくり振り付けを覚えていく。
私はかなり、いや相当下手だった。コンパスのように堅苦しく回ったり、おろおろしながら跳びはねたり。すると、身長一八四センチで真っ黒に焼けた建設会社勤務のマーシー=斧正司さん(28)=が、なぜか忍び足で近づいてきて、私の足をギュッと外向けにした。
でも、うまく踊れない。彼は首をかしげ、私の足を丁寧に内向けに戻し、ついでにスニーカーのほこりを払い、「すんまへん」のポーズを取りつつ、また忍び足で後ずさりしていく。虫が鳴き、蚊がプーンと舞っている。
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「ユニティビート」は、タウン誌編集部にいた近藤美和さん(33)や遠山さんらが、健ちゃんらとつくったチーム「ジョイシティ」が前身。一回で消えた「ジョイシティ」を受け継いで八年前に「ユニティビート」を立ち上げ、振り付けも音楽もスタッフが手作りで続けている。ちなみに踊り子の参加費は二万三千円。一万五千円前後が一般的という企業チームより高い。
「うちの練習、のほほんでしょ。でも本番になると違うのよ。初めてチームつくって帯屋町で踊り始めた時なんてね、背中に電流が走ったもんよ。すごい感動よ…」
午前零時半。インストラクター役の遠山さんがそう言って、赤い四駆で帰っていく。
高岡郡窪川町で母親と青果業を営む遠山さんはこの時期、仕入れと踊りの指導で高知−窪川を二往復する日もしょっちゅうだ。自慢の愛車の走行距離は、もうすぐ三十万キロになる。
(社会部・石井研)
【写真】初練習で振り付けを披露する「ユニティビート」のスタッフ(高知市稲荷町の青柳公園)
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