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「大阪南部で『YOSAKOIソーリャ』という祭りを広めたい」
よさこい祭り関係者へのあいさつがてら、視察に来高した大阪・貝塚市の貝塚五中の教諭グループからそう聞いたのは三月のことだ。
地元泉州の「だんじり祭り」(掛け声が「ソーリャ」)と鳴子踊り、さらに北海道のソーランをドッキングさせるというのだから挑戦的な試みである。面白いではないか。
ただ同時に、大丈夫なのかな、という印象も受けた。「だんじり」は荒っぽさにおいては日本の祭りの筆頭格。巨大なだんじりを引き回す度に家々の軒先を壊し、時にはけが人も出る男の祭りである。
十年前、泉州の臨海部にひょっこりできたばかりの埋め立て地(五中の校区)の試みが、果たして「だんじり文化圏」に受け入れられるのか。下手をすれば、はじき出されるのではないか、と思ったのである。
五中を母体にしたチーム「夢舞台」の取材の日、その疑問を率直にぶつけた。すると、世話役の山本貞治教諭(44)=体育担当=は「いやな、実際、大丈夫なんかいなと思うたわ。わし、秋の体育祭で踊ったらこの踊りは済みや思うとったんや。生徒が達成感を得る。そしたら、来年またやればえいやないかと」。
ところがこの読みは外れる。体育祭での達成感は「もっと踊りたい」という欲望に変わり、生徒たちは学校から地域の催しへと飛び出したのだ。やがて、泉州一帯に広めようという話にまで発展し始めた。その時になって、山本教諭ははたと当惑した。
体育祭で新しい踊りをやろうと最初に言い出したのは当の自分だ。が、その自分は貝塚市生まれの生粋の「だんじり男」。地域の気性、風土は知っている。五中は全員が転校生のような学校だ。「大丈夫かな」。正直な気持ちだったろう。
「そやけどな」と教諭は言葉をつないだ。
「わし、YOSAKOIソーリャ、泉州でいける気もするねん。確かにだんじりとよさこいは違う。けど共通点はある。それは見るもんがおらんと、つまらんいうことや。だんじりは男の祭り。女は期間中、家で『まかない役』。男やて年いったら、だんじりに触れん。けど、よさこいはだれもが参加できる。みな見られるのは好きや。秋にだんじりに燃える男が、夏には鳴子持つっちゅうのも、案外出てくる思うんや」
それが、期待値を込めた分析だ。そして、その可能性を探るヒントがこの八月に貝塚市で行われる「街びらき十周年」のイベントだという。
五中を発信源にした踊りはじわじわ市内に広がり、府内の箕面市など他地区の催しにも呼ばれるようになった。取材の日は、関西地区の夕方のテレビ番組でも「夢舞台」が取り上げられていた。知名度は確実に上がっている。
この夏、埋め立て地の誕生祭に集まる泉州地域の人たちが、そこで踊られる「YOSAKOIソーリャ」をどう評価するか。共鳴を呼び、より輪が広がるかどうか。そこが一つの勝負、という。
◇
一本のビデオテープが送られてきた。この六月、札幌のYOSAKOIソーランに参加した総勢七十七人の夢舞台の映像だ。
五中の生徒や父母、地域の人が和洋折衷の音楽に乗っている。この日のために学校を休んで参加した五中OBや車いすの女の子もはちきれそうな笑顔だ。「ソリャーいくぞー!」。旗持ちの山本教諭のだんじりパワーも全開だった。
「いつか、高知へ行きたいんです」
貝塚の人たちは、そう言っていた。
(社会部取材班)
【写真】チーム「夢舞台」の夜間練習後、生徒たちに踊りのアドバイスをする山本教諭(大阪・貝塚市立第五中学校体育館)
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