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灼 ―よさこい進化論―
<7>
第1部 鳴子文化圏をゆく
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たった一人で踊った 宮城県仙台市(上)

 あふれる思いがあまりに強すぎて、言わんとするところがうまく伝わらない。話す向こうもそうかもしれないが、聞く当方ももどかしい。「みちのくYOSAKOI祭り」実行委員長で高知大理学部四回生の三宅浩司さん(23)=宮城県亘理町出身=は、人をそんな思いにさせる青年だ。

「みちのくYOSAKOI」を仕掛けた三宅さん(右)と嶋津さん。2人の出会いが祭りの出発点だった(仙台市の定禅寺通)

 「そうそう、そうなんですよ。最初に話したのは昨年一月だったが、何を言ってるのかぜーんぜん分からないんだよね。よさこいを仙台でやりたいと言うが、よさこいって言われても知らないし。だからね、丁重に断ったんです」

 ケヤキ並木の緑が美しい宮城県仙台市の定禅寺通のすぐ近く。商事会社の事務所で苦笑するのは、社長で同祭り企画運営委員会の事務局長を務める嶋津紀夫さん(58)である。

 ところが三宅青年、断られても断られてもあきらめない。いかによさこいが素晴らしいか。思いのたけを高知から電話やファクスでぶつけてくる。長距離バスを乗り継ぎ、二十時間以上もかけて直談判にも押し掛けてきた。

 「仙台でやりたいんです」「景気も悪いし、無理だよ」。攻防が続いたが、あまりの熱心さに嶋津さんは次第にほだされていく。「しょうがねえなあ」。さすが東北人。三宅青年の粘り勝ちであった。

 「仙台の学生集めて実行委員会を作ったらとアドバイスしたんです。しかしあいつ、自転車で大学を回ったけどだれも乗ってこないって、しょんぼりしてるんですよ。かわいそうでねえ。よし分かったと。そこまで言うなら、祭りの資料を持ってきてみろと」

 持ち込まれた鳴子踊りのビデオを見て、嶋津さんは思わず身を乗り出した。民謡とロックの融合が新鮮だった。伝統と最先端の接点がある。古くて新しい祭りだ。面白いじゃないか。

 眠っていた情熱が再び燃え上がるのを感じた。昨年四月のことだ。三宅青年は、古里東北で自分に共鳴してくれる熱い心をやっと見つけたのである。

     

 嶋津さんが敏感に共鳴したのには訳がある。定禅寺通のケヤキ並木を電飾で彩る「SENDAI光のページェント」。今でこそ師走の仙台を代表する名物行事だが、嶋津さんは十二年前に第一回実行委員長を務め、新しいイベントを立ち上げる苦労をいやというほど味わったのだ。

 「暮れの忙しいのにと、地元ですら協力してくれなかった。ようしこの野郎と、最後は自分で五千三百万円の手形を切ったんだ。必死で協賛金集めに駆けずり回ったあの苦労を思い出したんだよね。ああ、おれも当時はこんなふうに思われてたんだなって」

 仙台人は何につけ乗りが悪い、食いつきがよくないという。保守的でなかなか燃えにくい土地柄だ。祭りを興すのは並大抵ではない。その嶋津さんをして「もう一度苦労してみるか」という気にさせたのは、ひとえに三宅青年の情熱に尽きる。

 「何度目に会った時だったかなあ。あいつね。踊ったんですよ。一人で。ほら、そこで」。嶋津さんは事務所の一角の小さなスペースを指さした。普通そんなことやりますかと、あきれた顔に書いてある。

 「なんだかんだっつってもあいつ、火付け役としては大したもんだよ。あの熱意、ひたむきさは今の学生にはねえもの」

 「みちのくYOSAKOI祭り」は、その三宅さんら学生でつくる実行委員会と、嶋津さんら社会人の企画運営委員会が両輪となり、この秋の第一回開催に向けて動いている。いきさつを聞いていて、「あ、この祭りは成功するな」。直感的にそう思った。

                                 (社会部取材班)

 【写真】「みちのくYOSAKOI」を仕掛けた三宅さん(右)と嶋津さん。2人の出会いが祭りの出発点だった(仙台市の定禅寺通)


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