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「何だこりゃ、こんな祭りがあったんかいって感じでした。面白いぞ。楽しい域を通り越してるぞって。見る方も踊る方もはあ、感動して、ほんと一回目から成功しすぎちゃって…」
阿寒国際ツルセンターの開設記念行事として一昨年八月、初めて北海道の阿寒町に響いた鳴子のリズム。町役場駐車場の特設ステージを舞台に十チーム三百五十人ほどが踊ったのだが、集まった町民に驚きをもって迎えられた。
「なぜって、見るだけでなく、自分も参加できる祭りというのは阿寒で初めてでしたからねえ。それまでは昔からあったり、お偉いさんが考えた祭りばかり。それを若い人が企画して実行に移した。それだけで十分成功ですよ」
振り返るのは「YOSAKOIほろろん祭り」実行委員長の早坂勝則さん(40)だ。当然「またやろう」の声が上がる。で、昨年からは実行委主催となり、十五チーム六百人が参加した。四千人の観客を集めた。人口六千七百人の町である。
会場の町役場駐車場は、ステージを囲んで大変な人出。夜店も出たが、最初の年は売れなかった。あまりの混雑で客が近づけなかったのである。この一帯は夜になると「戒厳令みたい」と冗談めかして評されるほど閑散とした通りだ。それが遅くまでざわついた。
集まった観客の顔ぶれを見て、早坂さんらは意を強くした。というのも、阿寒町は面積約七百四十平方キロメートル。香美郡全部よりまだ広く、なかなか町民が一つになる機会がなかった。
しかし祭り当日は、遠方の地区からも町民が集まってきていた。これまでになかったことだ。これはいける。祭りが町に一体感を生むのではないか。鳴子の音が町民の心を結んでくれるのではないか―。
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公民館のロビーで「よさこい談議」が弾んだが、あいにく次の目的地への飛行機の時間が迫っていた。せっかくだからと名所案内がてら、釧路空港まで送ってもらったが、道中、実行委メンバーの町教委主事、秋葉薫さん(30)の口調はいよいよ熱い。
「私、びっくりしたことがあるんです」
それは、本家高知のよさこい祭りの賞の内容だという。これだけ盛んなのだから、受賞チームにはさぞかしすごい賞金が出ているのだろうと思い込んでいた。しかし調べても調べても何も出てこない。問い合わせてあぜんとなった。賞金などない純粋な名誉賞だった。
「カルチャーショックでした。そんな祭りが日本に存在し、存続していること自体が驚きです。イベントは駄目になるに従って賞品、賞金は逆に良くなっていくんですよね。そのことに常々疑問を抱いてたんですが、その答えがここにあるんじゃないか、と」
札幌のYOSAKOIソーランを手本に始まった阿寒町の祭りにとって、高知のよさこいは祖父母に当たる。「本場はすごいよ」と話に聞いたが、実際どんなものなのか。南国土佐の真夏の祭典に心は引かれるばかりだ。
「やっぱり本家本元を自分で踏んでみないと。ですから私、ことしは高知県人会に加えてもらってプライベートでよさこい祭りに参加します。うちの祭りはまだこれから。本場で勉強させてもらい、いいところを阿寒に生かしたい」
釧路空港で、秋葉さんはぴょこりと頭を下げた。「こんな遠くまでありがとうございました。八月にはご当地にお邪魔します」。まるで聖地からやって来た伝道者を見送るみたいだった。
(社会部取材班)
【写真】「YOSAKOIほろろん」の舞台となる町役場駐車場。祭り当日は4000人の観客でごった返した(北海道・阿寒町)
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